Tk物語
□互いの願い
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湖畔のほとりに二つの人影
人影は男と女
スクライブ族の若き長と世話役
「ん〜っやっぱ外は気持ちいー!」
「えぇ、本当」
「座らね?」
そう言って自分が先に座りリウはレン・リインに促す
「そうね」
微笑んで隣に座り込む
お互いに只隣同士に座り合い
時間を共に過ごす
それだけでも
リウは幸せを感じる
「リウ・シエン」
徐にレン・リインがリウの名を口ずさんだ
「?何、レン・リイン」
「……あの時、私は…貴方に誘われていたのに…それを断って集落に残った」
「…うん」
「貴方に誘われてとても嬉しかったし、ついて行きたかった…でもその時にはお世話役を仰せつかっていたから……だから断った」
「うん…」
知っている…
あの隠れ集落から
ルオ・タウとレン・リイン
二人を連れ共にファラモン城へと向かう時に
自らレン・リインは想いを話してくれたのだから
「私は…思うの」
「何を…?」
「本当に嬉しかったなら…本当について行きたかったなら……全てを捨てて貴方の手を取るべきだったと…」
「……」
「でも私はあの時それをしなかった……だから、本当はもしかしたら…今こうして貴方の傍に…隣にいる資格は…―――」
淡々とした口調は徐々に弱々しく、震えていき瞳には迷いと悲しみの色を携えさせて語っていく
その最中……
「何言ってんの?」
低い声が発っせられた
他でもない
レン・リインの隣にいるリウ自身の声
「っ?!」
レン・リインは驚いた
知っているリウの声は本来もっと高い
なのに今発っせられた声は低かった
「資格?そんなモン必要?いらねーでしょ。ンなくだらねーモン」
尚も低い声のまま言葉を続けるリウ
「リウ・シエン…」
瞳を揺らがせリウの名を口にする
そんなレン・リインの様子にリウは小さく溜息をついて
「昔の…あの時の事なんて今はいいじゃん。関係ないだろ?」
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