Tk物語

□収穫祭2
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耳には賑やかな音と声、そして吹く風の音が届く
空を見上げると青空が広がっており、雲がゆっくりと流れている




「…………ん?」




ふと、リウは誰かに呼ばれた気がして空へと向けていた視線を下げて辺りを見回す
見回すがリウに近付いてきていたり、手招きや呼んでいる素振りをしている者はいなかった




「………気のせいか」




「リーウーちゃーん」




「わっ!」




リウが自分の気のせいと片付けた矢先、ふにゃふにゃした声とともに後ろから抱き付かれる




「うふふふ〜」




「っと、え?あれ、シスカさん?!」




リウに抱き付いてきたのはシスカで訳が分からずリウは困惑する
困惑するなかでもよくよく見ればシスカの顔はほんのりと赤い。そして香るのはシトロ村の地酒の香り




「リウちゃん、見〜つけたぁ。お母さん、探したのよぉ」




地酒の香りがする事と顔が赤い事から酔ってるのは明白
そんなシスカはやっぱりふにゃふにゃ声で話す
リウはシトロに来て半年だが、大体の人物像は把握している。普段からシスカはほんわかとした雰囲気を持っていて、いわば不思議な女性




「あ…えっと……酔ってますね、大丈夫ですか?」




「大丈夫よ〜、リウちゃんはやっぱり優しいわねぇ…お母さんはそんなリウちゃんが好きよ」




シスカはスリスリとリウに頬を擦り寄せ頬擦り。確実完全に酔っている
頬擦りなど樹海に残してきた幼馴染みのレン・リインにすらされた事のない為、リウは気恥ずかしくなり慌てる




「わわ、シスカさんっ」




「あ、リウー。そっちにお姉ちゃんいな……――ちょっと、何してんのよ!」




リウはシスカから離れようとするがしっかりすっかり引っ付かれているのでなかなか離れられない
そこへマリカがやってくると二人の光景を目の当たりにするや否や怒りを露わにさせる




「へ?!あ、マ、マリカ!ちょっと…あのっ――」




「あらぁ、マリカ〜。怖い顔してどうしたの〜?」




「リウ、お姉ちゃんに何してるのよ!」




「ななっ何にもしてないよっ!」




「じゃぁ、何で引っ付いてんの!」




「そ、それは、シスカさんが…」




「お姉ちゃんが?」




マリカの剣幕にリウはタジタジする
それでも会話は何とか出来ており少しずつ話す
リウがシスカがと言うと怪訝そうながらもマリカは反応




「う、うん…」




「んー?なぁに?」




シスカは変わらずふにゃふにゃでやっぱりまだリウに引っ付いている




「お姉ちゃん?」




「シ、シスカさん酔ってるんだよ…」




「えーっ?!嘘っお姉ちゃんってば、何時お酒飲んだのよ!?」




「お酒ー?お母さん飲んでないわよぉ」




「あ〜…もしかしたらさっきちょっと呼ばれた時に飲んだのかな…お姉ちゃん」




「うふふふ〜…」




「あのさー…とりあえずわかってもらえたよね?」




変わらずなシスカにもはや離れるのを諦めたリウがマリカに聞くと渋々な感じでマリカは頷いた




「しょうがないわよね……お姉ちゃーん、お父さんが呼んでるから行こう?」




「あらぁ…お父さんが?それならリウちゃんと一緒がいいわぁ」




「へ?」




「だぁって…お母さん、リウちゃんが好きだものぉ」




何故、そこで自分の名前が出されるのかという疑問が浮かび反射的にシスカを見るリウ




「あの、何でオレ?」




「言ったでしょ?お母さんは〜、リウちゃんがだぁいすきなの。ん〜……」




「わっちょっ!シスカさん、近い近い近い近い!!」




ふにゃふにゃ声なシスカはそう言うとリウに更に引っ付き、顔も近付ける
するとリウはまた慌てたが遅かった











―――チュッ










「………あ」




「……へ?え、ちょっシ、シシっシスカさん?!なっ…〜っ!!」




「ふふふ〜、リウちゃん好きよー」




リウがシスカの方を向いていたのもあり、事もあろうか唇が触れ合う
これにはマリカもビックリでリウに至ってはもうそれどころではなかった
シスカは二人の様子なんのそのでリウにまた頬擦り




「……………リーウー…」




「ほぁ?」




「何で顔逸らさないのよっバカー!」




「そっそんな理不尽過ぎーっ待って待ってっ!待ってクダサイ!ぎゃーっ!!」





















それから暫くリウが別な怖さでシスカに迂闊に近付けなくなったりしたのはあまり知られていない














END
20100915



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