ROOM BECAUSE OF BECOMING SALACIOUSLY

□ワンコな彼とにゃんこな私
1ページ/34ページ




桜の花びらが散り、木々や山々が新緑に色づき始める季節。今日は、雲一つ無い気持ちの良い快晴。


空を見上げた私は、その眩しさから避ける様に片目を瞑る顔の上に手を翳(かざ)した。


『…まっ、ぶしい…』


けれど、私は青く澄み渡っている此の空が大好き。燦々(さんさん)と降り注ぐ太陽の光を浴びていると、凄く元気になれるから。


頭上高く両手を掲げ思い切り背伸びをする。普段は猫背の私。この時だけは体の隅々まで伸ばす様に心掛けている。


清々しい朝の空気を、鼻からいっぱい吸い込んで肺の深部まで送り込む。そして、両手を下ろしながら口からゆっくりと吐き出した。


『よし、今日も一日頑張ろう!』


自分に喝を入れる様に大声を出せば、隣を歩く親友の佐倉栞(さくらしおり)が呆れた顔ですーっと離れて行く。


『ちょっ!? 栞さん!? 何故に私から離れるのだ?』


彼女にそう問えば間髪を容れず、まるでマシンガンの様に言葉を乱射しまくる。


「何故に? あんたバカなの? あのね、朝から駅前のこんな大勢人がいる場所で大声出してさ、しかも自分に気合い入れるとか。今から何かと闘おうとしているオッサンかよ! 私は花も恥じらう乙女なの。それに何なのよ、その言葉遣い。直しなさいよ恥ずかしいんだから!」


息継ぎもせず一気に捲し立てた栞は、ゼエゼエ言いながら肩で息をしている。


私は俯いたまま顔を上げる事が出来なかった。
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ