学園遊戯王活動記録

□8,彼はポーカーフェイス
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8,彼はポーカーフェイス 〜DAの日常風景〜
‐その名は遊星‐











「お遊びは止めだ、ジャック」


凛とした、でもどこかに怒気のこもった声が教室に響く。
なかなか来ない衝撃に薄く目を開けると目の前の金髪の大男_ジャックと呼ばれた奴の拳を細く、しなやかな腕が頑として動くのを静止させていた。

「ぁ…」

何が起こったのか察しがつかず、ジャックの後方を見ると黒髪に金色のメッシュが入った髪型の、透き通った青色の目をした青年がそこにいた。
青年は鋭い眼光でジャックのほうを一瞥するとこちらに視線を移して

「…大丈夫か?」

と一言言ってきた。

腕をつかまれたジャックが離せ!とでも言わんばかりに青年の腕を振りほどく。
青年は横暴な態度をとられてもなお一歩も引かずに、

「皆の迷惑になっている。万丈目も分かっているだろう?」

と、まるで母親が言い聞かせるように規律のある声で青年は言った。

「ぁ…と」

いまいち思考追いつかずに言葉を紡ごうとしているとそれに気づいたのか

「この間、転校してきた不知火遊雅さんだね…俺は不動遊星。遊星と呼んでくれ」

とやや場違いな自己紹介をした。

「遊雅でいいです。それと、助けてくれてありがとう(特徴的な頭だな…)」

「いいんだ、よくあることだからな」

「「なっ!」」

遊星の発した言葉に二人はジャックと万丈目の二人は少し反感を覚えたようだが遊星からの鋭い視線をもらい互いに口をつぐんだ。

「(なんだ、この雰囲気…;)」

「遊星ーっ」

教室の入り口からの声。
振り向くと赤い髪の女子生徒がこちらへ駆け寄ってくる。
たしか…“十六夜アキ”という生徒だったはず。
前に自己紹介されていたのを覚えている。植物族デッキを使うデルフィヌス(青:イルカをモチーフにした)寮の生徒と聞いている。

「ハァ、よかった。間に合って。遊雅さんもケガはない?」

「あ、はい。おかげさまで;」

アキはやや息を上がらせてホッと胸を撫で降ろした。
そして喧騒の中心にいた二人のほうを向くと「ハァ…貴方たちはホントに…〜〜〜」と説教が始まった。
遊星はその様子を見て「ほどほどにしてやれよ」と笑顔で言った。

「(本当になんなんだ、この二人;)」

後ろに視線を感じて振り向くと半ば空気化していた覇王がいた。

「遊星」

「覇王、すまなかったな。迷惑かけて」

申し訳無さそうに目を伏せる。
覇王は「別にいい」といって説教のほうを見やる。
説教の様子を見る限り、二人の喧嘩は今回だけの事ではないようだ。言い合いの内容を思い出すとずいぶんくだらない事のように思えたがそこまでして二人の間に「譲れないもの」があるのだろうか…?そしてこの喧嘩が起こるたびに止めているのは遊星とアキの二人のようだ。

「遊星?」

「なんだ遊雅」

「ジャックやアキとはどうゆう関係なの?幼馴染?」

「え?あぁ…そうだな、」

(あれ?変なこと聞いたかな…)
聞かれた遊星は今まで貫いていた覇王にも負けず劣らない無表情(世間的にはポーカーフェイス?でいいのかな?)がすこしばかり崩れる。
答えが出ないのかじっと説教の行われているほうを見る。

「ジャックは“腐れ縁”のようなものだ。アキは…」

「アキは……?」

遊星は言ってほんの少し遊星は顔を赤らめた(様な気がした)。

「アキは…


大切な仲間だ」


「…ふぅん。そっか」

青色の目が悲しげに揺らぐが表情はこれ以上にないくらい笑顔だった。
どうしてだろう。無表情のせいか心から喜んでいるのかよく分からない。

「いっつもいっつも〜〜。〜〜なんだからって、ジャック!?聞いているの!?」

「っ…はい聞いてます」

「万丈目君もそう!ジャックのくだらない〜〜〜で…」

「…申し訳ないです」

(いつの間にか正座させられてる;)
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