sunset musical
□恋情プロローグ
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「おい笹丘(ささおか)、聞いてんのか」
よく通る中性的なその声であたしの名前を呼ぶ。
持っていたシャーペンをくるりと回す。
その動きを目で追っていたあたしは、思わず息を零した。
最近発見したんだけれど、少し苛立つとシャーペンを回す癖があるらしい。
ああ、そうだ。この人の癖を後で手帳に書き記しておかなければ。忘れない内に。
「おいってば」
ぼうっと、脳を全てピンク色に染め上げられたあたしは頬杖をしながら、
「きいてますー」
なんてどこか不抜けた声を上げた。