トリップガール

□『俺についてこいよ』
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美空『……悪気なんてなかったのに。』


私は誰もいない夕方の公園のベンチに座ってそう呟いた。
そして頬をつたって落ちていく涙を手で拭う。
それでも溢れ出る涙はいっこうに止まらない。
もう冬といってもいいほど寒い公園。
だけど今は1人でここにいたかった。

私の涙の理由。
それは親友である瑠璃(るり)との喧嘩だ。
これはつい数十分前の出来事。
私はいつものように瑠璃と学校から帰っていた。


瑠璃『あのさ……美空。
紗希人(さきと)って好きな人いるのかな?』


どこか暗い表情の瑠璃は俯きかげんに私を見らずそう呟いた。

紗希人とは瑠璃が今想いをよせている男の子。
いつも私たちと仲良くしている平凡な男子だ。

私はその“紗希人”という名前を聞いてドキリとしたけど、平然を装い、こう言った。


美空『もしかしたら瑠璃かもよ!?
瑠璃可愛いし、絶対そうだよ。』


そう言った私は心の中で瑠璃に謝った。
なぜなら、私は嘘をついたから……紗希人は私のことが好きだから。

実は放課後、私は紗希人に告白をされたのである。
でも私は紗希人のことを仲のいい男友達としか見たことなかったし、恋愛感情なんて持ったことなかった。
だから私は言った。『ごめん。』って……
それに瑠璃が好きな紗希人と付き合うなんて出来なかった。


瑠璃『……嘘つかないでよ。
私、知ってるんだからね。』

美空『えっ……る、瑠璃?』

瑠璃『美空、さっき紗希人に告白されてたでしょ!
私見てたんだからね!』


私の目の前には見たことない瑠璃がいた。
普段は声を張り上げたりしない、とても大人っぽい瑠璃。
でも目の前にはまるで別人のように大声を出し、目を見開き、恥なんて気にしない瑠璃がいる。
私はあまりの迫力と全部聞かれていたということが信じれなくて出す言葉がなかった。


瑠璃『私……美空は嘘なんてつかないコだって思ってた。
……親友だと思ってくれてると思ってた。』

美空『私、瑠璃のこと親友だと思ってるよ!』

瑠璃『そんなの嘘よ!
どうせこれも嘘なんでしょ!
……それに親友だと思ってるならなんで嘘ついたのよ‼』


そういい捨て、泣き出した瑠璃は走って行ってしまった。







美空『ハァーッ………』


さっきの瑠璃との喧嘩が頭の中で繰り返されては、その度に落ち込んでいる私がいる。

あの時……瑠璃から紗希人の好きな人を聞かれた時、『私。』って応えれば良かったのかな。
……そんなこと言えないよぉ。

いつもはポジティブで明るい私だけど今回はそうはいかない。
なんたって親友との喧嘩だから。

明日から学校どうしよう。
紗希人と気まずいのはまだしも、いつも一緒にいる親友の瑠璃とも気まずいなんて……絶対に耐えれない!

私は無意識にこう呟いた。


美空『こことは違う、どこかの世界にいけないかな。』

???『その願い叶えてやるよ。』
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