トリップガール
□旅の始まり
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まるで合わせ鏡に映っているようなアツヤとアツヤそっくりの士郎という少年を、私は交互に見比べている。
別人とは思えないほどそっくりな二人は同じように目を見開いた状態で硬直していた。
お互いに名前知ってるってことは知り合いなのかな?
でも異世界に知り合いなんているのか?
……あーー!わけわかんない!
頭がパンクしちゃうよ!
ただでさえ自分の状況がわからないというのに、目の前では意味不明なことがまたもや起こっている。
今起こっている状況に頭がついていかないと実感した私は、何も考えないことにした。
士郎『アツヤ!アツヤだね!』
数秒の沈黙の後、士郎という少年は今にも泣きそうな表情でこちらに走ってきた。
アツヤ『士郎……久しぶりだな。』
近くで見るとほんとにそっくりな二人に私は見とれてしまう。
こんなそっくりな人物が異世界に存在してて、しかもお互いに知ってるとか普通ありえないんじゃ……
私はアツヤに士郎という少年とどんな関係なのか聞こうと口を開こうとしたが、士郎という少年の言葉によって止められてしまう。
士郎『僕……ずっとアツヤは死んでしまったかと思ってた。』
ア、アツヤが死んでる!?
……でも、さっき確かに触れれてたし、足もあるし、半透明でもないのに?
私は恐る恐るそっとアツヤに聞いてみた。
美空『アツヤって……幽霊なの?』
アツヤ『正式にはもうこの世には存在していねぇ人間だけど、幽霊じゃねーよ。』
この言葉にホッと安心した私は大きな深呼吸をして息を吐いた。
すると士郎という少年がとんでもない発言をする。
士郎『アツヤ、このコと知り合い?
もしかして彼女?』
悪気はないのか笑顔で私を見つめてくる士郎という少年。
彼女!?とんでもない!
しかも今さっき会ったばっかりだし、知り合いっていうほどでもないんだから!
美空・アツヤ『『違う!!』』
見事にハモった私とアツヤはしばらく睨み合った後、フン!と顔を背けた。
アツヤ『こんなバカで泣き虫で手間がかかる女、誰が彼女にするか!』
そ、そんなに欠点ばかり並べなくても!
確かに自覚はあるけど……
私はアツヤの言葉にショックを受けて力が抜けてしまった。
士郎『アハハッ!二人とも仲がいいんだね。
……僕はアツヤの双子の兄の士郎。よろしくね。』
なるほど!二人は双子のだったんだ!
どうりでそっくりなわけだよ!
……性格は全然似てないけど。
美空『私は美空。
こちらこそよろしくね!』
自己紹介も終わり、三人ともお互いのことを分かってきたところで私たちは木陰に座って話すことにした。