トリップガール
□魔女の歓迎
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アツヤ『……だーーっ、もぉっ!!お前うっとうしいんだよ!
いい加減離れろ!』
アツヤと士郎の間に入り、二人の腕に自分の腕を絡ませている私にアツヤは罵声を浴びせる。
そしてアツヤの怒鳴り声のせいで、木にとまっていたカラスや鳥たちが一斉に驚いて飛んで行ったのだった。
しかし私はアツヤの言葉には無視して慌ててこう言う。
美空『ちょっと!うるさい!
そんな大声出したら魔女に気づかれちゃうでしょ!』
アツヤ『……お前なぁ。』
低くゆっくりした口調で口を開いたアツヤは今にも怒りを爆発させそうだけど、私はそれでも二人の腕からは離れなかった。
だって……今は怒ってるアツヤよりも、いつ私たちを襲ってくるか分からない魔女の方が遥かに怖かったから。
士郎『美空がこれだけ言ってることだし。
腕を組むくらいしてあげてもいいじゃない?アツヤ。』
美空『さすが士郎!女の子の心をよく分かってくださるぅ。』
アツヤから私をかばってくれた士郎の肩に、私は頭を傾けるのだった。
それを見たアツヤは『ふんっ!』と乱暴に顔を背け、不機嫌そうな表情をしている。
それにしてもさっきから気になってることが一つ。
気のせいかもだけど……考えすぎなのかもだけど……。
何かからつけられてる気がするんだよね。
さっきアツヤの大声で鳥たちが一斉に飛んで行った時も、かすかに落ち葉を踏みしめる音が後ろから聞こえた……と思うし。
気になる私は試しに後ろを振り返ってみる。
すると慌てて木の後ろに隠れた人影が一瞬だけど確かに見えた。
やっぱり何かからつけられてる……
そう確信した私の頭の中は魔女という恐ろしい者でいっぱいになるのだった。
美空『ま、魔女だーーっ‼』
絶叫した私はアツヤと士郎の腕に絡めている腕に力を入れる。
アツヤ『いでぇっ!』
士郎『いたっ!』
私が腕を締め付けたせいで苦痛の声をあげたアツヤと士郎。
しかも私たちの背後からは何者かがとどまることなくこちらへ近づいて来る足音がする。
振り返ることなど怖すぎて私には出来もしない。
だから私は二人の腕を引いて走りだそうとした……けど遅かった。
美空『ドワァッ!』
背後から突進してきた何かに後ろから飛びつかれ、あまりの威力に地面に押し倒さてしまった。
私は恐怖で声をだすことも動くことも出来ない。
するとアツヤと士郎が素っ頓狂な声をだす。
アツヤ・士郎『リーシェ!?』
リーシェ『うぐぅ……怖かったよぉ。』
そぅ。私が魔女だと勘違いしていた人物。つまり、今私の背中に抱きついているのはリーシェだったのだ。
よっぽど怖かったのだろう。
ヒクヒクと体をしゃくり上げながら小さく泣いていた。