Novel

□背中
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「うぁ、ひ、あぁ…イっ、ゾロ…きもち、イ…」
のけぞる自分の背、出入りするゾロのもの。
自分の声とは思えない声と吐息が格納庫内に充満する。
毎晩、俺はゾロに抱かれる。
酷く、酷く。
それでいいんだ。
愛情なんて生ぬるいものは、そこにはない。
ただただ、目の前の男の体を食らう。
目の前には野性的なゾロの目。
鈍い光を放つそれに、俺は少しの興奮と、安堵を手にする。

こいつは、生きてる

俺に、あらん限りの精を吐き出し、その眼で、体で、俺の体に食らいつく魔獣がそこにはいた。


「サンジくん、そのくま大丈夫?」
昼食を終え、珍しくキッチンで航海図の整理をしているナミが皿洗いをしているサンジに警戒心を抱かせぬよう、いつもと変わらないトーンで何気なく訊ねた。以前、腰の調子が良くなさそうなサンジを心配し、話しかけると、軽くいなされてしまったからだ。
「んナミさんっ!!俺のこと、心配してくれるなんて…!!俺の愛が、着実に君の心に届いてたんだね!!……さ、俺特製ブレンドみかんティーを君に捧げるよ。これで君の心にもおれたちの愛の噴水が噴き乱れるはずさ…!!」
いつものようにクルクルと回りながら器用にお茶を自分のカップに注ぐサンジを見ながら、ナミは内心溜息をついた。

サンジくんは私に、心配の一つもさせてはくれない。
与えてばかりなのだ、この人は。
自分の限界がくるまで…
しかし、そのやり方をたやすく否定できる生き方をナミはしてなどいないし、サンジのその徹底した与えることに対するスタンスにどこか尊敬の念すら抱かずにはいられなかった。

思考の渦から顔を上げると、ティカップから沸き立つ程よい甘い香りに思わず顔がほころんだ。するとその前に立つサンジと思わず目が合った。サンジはいつもの対女性用笑顔ではなく、本当にみかんティのように甘くほほ笑んでいた。

「ナミさん。俺なら、平気ですよ。」
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