Novel

□背中
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何がどう平気なのよ!!

何の答にもなっていないサンジの言葉に、怒りにまかせて怒鳴るのは簡単だった。
だが、それじゃいけないこともこれまでの船旅で学んできたハズだ。
言いたいことを全て飲み込み「そう」とサンジにそっけなく返すと、気にしたそぶりも見せずみかんティを持ってナミはキッチンから出て行き、甲板を眺める。
あいつらはのんきでいいわよね…ロビンは相変わらず何考えてんだかわかんないけど…
釣りをしているのにもかかわらず騒がしい年少トリオと、メリーの階段に座りながら読書をするロビンを見ながら、こういう色恋に口をはさむ役割は自分の役目なのかとため息をつき、この異変の元凶であろう男のいる船尾へと向かった。
「ねぇ、ゾロ。あんた、なんかした?」
「ぁあ?なんのことだ」
「サンジくんのことよ、あんただってわかってるでしょ?」
それとなく聞くだなんて悠長なことをしていても、色恋に疎いゾロにはわかりっこないと何の脈略もなく尋ねると、普段の仏頂面からさらに眉間にしわを寄せ始める。
「わかってるって、何がだ」
「は?ちょっと、この私が本気で心配してるんだから、ちゃんと答えなさいよ!!」
のらりくらりと返されるゾロの返答にだんだん苛立ちを覚えながらもなんとか真意を聞き出そうと、堂々めぐりのような会話を何度か繰り返すが、かみ合わない話に、ゾロも苛立ちを募らせ、それにまかせて怒鳴ってしまい
「だからわかんねぇ、っつってるだろうが!!あいつなら、いつも通じゃねぇか!!」
「はぁ?どこがよ!!……もういいわ。あんた、毎日毎日、何見て過ごしてるわけ?信じらんない」
深くため息をつくと、ナミは軽蔑の眼をゾロに向け、そこから立ち去ってしまった。

ナミの辛辣な言葉に、さすがのゾロも堪えたのか最近のサンジの様子を思いだし始めた。
確かに最近のコックは前からは考えらないほどに夜の行為に関して積極的だ。
自分にもっととねだり、腰を振り、自分を見ては薄く微笑む。
自分がコックを食べているのか、はたまた自分がコックに食べられているのか…いつもその思考が頭をよぎる瞬間に自分の理性はコックによって奪われていくのだ。
…あぁ、やめだやめだ。
こんな昼間っから、自分でも何を考えているんだと頭をかきながら思う。
少しため息をつくと、コックとの妄想をやめ、視線を上にあげた。すると、目の前にあるキッチンの小窓から見えるコックの金糸が何度か見え隠れする。
あの金糸と、アイツの眼だけは何があっても濁らないのだろう、そう思うとなんだか安心して、ナミの言葉など忘れて、ゾロは眠りについた。
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