短編綴
□月の影
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「蒼弥、入るぞ」
声をかけて襖を開ける。と、規則正しい寝息と共に布団が上下している。
「人を呼び出しといて寝るとは…」
起こすのも悪い気がするので、準備されていた薬を自分で塗り、手当てを早々に済ませた。・・・と言っても、手当てするほどの怪我じゃねえけどな。
薬を定位置に戻すと、誘われるように枕元に座り込み寝顔を覗き込んでみる。軽く開かれている口がやけに色っぽい。
「兄弟で顔も似てるってのに、どうしてこうも蒼弥は綺麗に感じるんだろうな」
髪を弄ったり頬をつついたりするが一向に起きる気配がない。
全く起きやしねェ。
そんなことを考えつつずっと顔を見ていると、ふと視界に唇が入った。
――――ドクン
「なっ、」
何だ、この高鳴りは…
無意識に手が蒼弥の顎を捉え唇を指で辿る。どれ程触れても飽きない感触。
もっと触れていたい。
本能が俺自身に語りかけてくる。
「…少しだけならいい、よな」
クッと顎を指で掬い、ゆっくりと顔を近付ける。
触れるだけの口付けをした。
「………ん、まさ…むね?」
「っ!!」
バレた…?
出来る限り不自然じゃないように手を離して距離をとる。
――と、
「ん、政宗」
「なっ」
離れようとした手を捕まれそのままグッと引っ張られた。反射で蒼弥の顔の横に肘をつき、なんとか崩れ落ちるのを阻止する。
「オイ、いきなり引っ張ったら危ないだろうが!」
「…ああ、ごめん」
「ったく…」
と言いつつも、ほぼさっきの体勢に逆戻りじゃねぇか…
至近距離で見つめてくる視線に再び胸が高鳴る。
引かれた手はまだ捕まれていて、振りほどこうと思えば出来るのにそんな気にはならなかった。
「怪我、は」
「てめぇが寝てたから自分で治療しといた。次はすっぽかすなよ?」
少し意地悪気味に言ってみたが、何故か笑顔を返された。
「まさ、一緒…寝よ?」
「な、ん――んンッ!」
返事かと思えばいきなりの爆弾発言。
驚いて固まってる隙に頭に手を添えられたかと思えばグッと引かれ口が触れ合った。
「ふァ…ちょ、」
しかも、さっき俺がしたキスじゃなくてもっと深いやつを。
口を離されると、至近距離で見たことのない妖艶な笑みを浮かべられた。
………Shit、
「調子、ノッてんじゃねえッ」
「んァ!?ン、ふぅっ…」
隙をついて頭の下に手を滑りこませて固定すると噛み付く様にキスをする。
「ンぐ…はあッ…んんっや」
苦しそうにもがいて押してくるが気にせず息つく間も無くキスを続ける。
「ま、まさっ…も……やめっ」
涙目になってきたのを見て仕方なく口を離してやると、肩で息をしながらぐったりとした。
「何だ、もう終わりか?蒼弥」
「ふ、はあ…はっ……政宗の意地悪ッ」
「まだ終わってねえよ」
「ッ!」
ペロッと唇を舐めれば途端に固まる蒼弥。その隙に唇を割って舌を滑り込ませ、奥に逃げる舌を絡めとる。息ができるように優しく、でもより深く。
「ふあッ!ン、はッ…んうッ…」
わざと音を立てれば恥ずかしそうに震え、俺の着物をキュッと握ってきた。