短編綴
□月の影
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「はあ・・・ン、っは・・・」
気付けば部屋に明かりを灯さないと見えないほど薄暗くなっていた。
真っ白な頭でふとそんなことを思って火をつけようとしたが、全身の力が抜けて指一本すら動かすことが出来ない。
政宗の口付けで目が覚めた。だから仕返しとばかりに俺からもやったら、こんなに長い間口付けを求められるとは想像もしていなかった。
やっと解放されて上がった呼吸を落ち着けようと深く息をするがすぐに収まる気配はない。さすがの政宗も疲れたのか、俺の横に仰向けで寝転がって息を整えている。
「・・・ワリィ」
「・・・・・・・・・え?」
ふと呟かれた声を聞き取ることができず横を向くと、隻眼の目が俺を見ていた。
「・・・すまねぇ、こんなことする気はなかったんだ」
いつもは堂々と話すのに、今はぼそぼそと申し訳なさそうに言っててなんだか笑えてしまった。
「わ、笑うんじゃねえ!」
「ふふ、いや、だって・・・ははっ!」
「人が真剣に謝ってンのにてめえッ!」
「っわあ?!ちょ、何すんだよ政宗ッ」
俺が抵抗できないのをいいことに、髪の毛を乱雑に掻き回われる。それを何とか腕に力を入れて掻き回す手を掴むと、やっと止めてくれた。
「HA、まだ体力残ってやがったのか」
「振り絞ったら、案外ある・・・もんなんだ、ねっ」
その代わりまた息が切れちゃったけど。
掴んだ俺の手ごとゆっくりと政宗が腕を下ろすとそれにつられて俺の手も下り、優しく布団の上におろされた。
「謝ること、ないよ。すきんしっぷ?・・・を、政宗から初めてされて、嬉しかった」
だから政宗は悪くない。政宗に安心してもらうように優しく笑って、近くにあって触れていた政宗の指を軽く握る。
政宗が握り返してくれたと思った瞬間腕ごと体を引かれ気付けば政宗に抱きしめられていた。
首元に政宗の顔が埋まり、同時にチクッと痛みが走った。
「っー!な、なに」
ビクッと体を揺らすと耳元で笑われ一気に体温が上がる。
「これからお前が触っていいのは俺だけだ。小十郎や他の奴には触れんじゃねえ」
「え・・・な、なんで」
「ンなの決まってるだろうが。蒼弥、お前は今日から俺だけのモンだ。You see?」
「んッ・・・!」
低い声で囁かれたらゾクッと全身に何かが走った。そのまま耳に舌を入れられて水音が頭の中に直接響き渡り、ゾクゾクと震えが起きる。
「ひあッ!・・・やぅっ」
「こんなことするのは俺だけだ。蒼弥はただ俺に身を任せてりゃいい」
カリッと耳を噛まれればまた体を何かが走る。それが怖くて逃げようとすれば、すかさず政宗の手が俺の頭と腰を捉え引き寄せた。
それからも集中的に耳を攻められ続け、再び頭が真っ白になって次第に体が熱を持ち始める。
「やあッ、も、やめ・・・ン、変になるっ」
「どこも変じゃねえよ。そういうのは気持ちイイってンだ」
「あ、う・・・でもっ、熱いよッ・・・」
「・・・A-ha、そっちの教育は全くされてねェってわけか」
「ン・・・きょー、いく?」
「知りたきゃいつでも俺の部屋に来な。・・・言っとくが、俺以外に質問するのはタブーだぜ?」
「はァ・・・た、たぶー・・・?ンあっ」
「俺以外に聞くなってことだ、You see?」
「・・・ん、ヒッ・・・わか、った・・・から、も・・・ほんと、やめぅッ・・・っああ!」
俺の返事にクスッと笑い、再度耳を噛まれればやっと執拗な攻撃をやめてくれた。
「はあッ・・・も、やらっ・・・ふ、ぅ」
未だ体は解放されずに危機感はあるが、それよりも息を整えるのに専念する。
と、頭を押さえていた手が顎を掴み、無理矢理上を向かせられる。
「やっ、苦しいからも、やだっ・・・ン!!ふうぅ・・・あ、はッ」
俺の言葉は聞き入れられず、その体勢のまま口づけされた。
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「―――政宗様、夕餉ができましたので」
「っ、Ok」
しばらく前から部屋の外にいた小十郎から声をかけられ、自分が夢中になっていたことに気付く。
途中から蒼弥を身体ごと俺の方に向けたから無理な体勢じゃなかったが、辛そうに呼吸をしているところを見るとやっぱり無理させたんだと感じる。
「蒼弥、大丈夫か?」
「っは、う・・・だ、じょーぶッ・・・」
乱れてるけれど、やっぱり綺麗だと思う。
蒼弥にキスされてから理性がぶっ飛んだが、まあ、結果オーライだ。
再びギュっと抱きしめ耳元に顔を寄せると、過剰なまでに震えられた。
「ンなビビるんじゃねえ」
「ん・・・ごめ、」
「もう何もしねぇよ、だから安心しな」
「はあ・・・ッ、ほんと、だな・・・っ?」
「俺は嘘なんてつかねぇ」
「ン・・・信じ、る」
こんなときだって綺麗に笑う蒼弥が好きだ。
だから、
「蒼弥、愛してる」
「っ――!!」
あとはお前次第だ
End