短編綴

□時が過ぎても
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―――…ね


――き――…さむ…








起きて?政宗――…




「…あ?」

誰かに呼ばれた気がして意識が浮上する。
目を開けると白い天井。

―…白?


疑問に思っていると、左手を握られる感覚がして咄嗟に視線を移す。


「ん、まだ寝惚けてる?もう夕方だよー?私の家に来たいって言ったの政宗なのに、飲み物取りに行ってる間に私のベッドで寝ちゃうなんて」

「…Ah、悪ぃ。どうやら思ってた以上に疲れてたらしいな。…寂しかったか?」

…ああ、ここは戦国の世じゃねェんだったな。小十郎も真田幸村も、もう居ねえ。
……寂しいのはコイツじゃなくて、俺だったわけだ。

俺だけが記憶を持ったまま生まれ変わって、今じゃあ一人だ。
認めてしまうとより寂しく感じてしまうわけで、そんな寂しさを埋めたくて、俺の手を握ったままのさくまの手を引き、体制を崩して倒れてきたところを優しく抱き締めた。

「わわわわっ!?な、何、政宗、どうした、の」

「顔真っ赤だな。期待、してんのか?」

俺に過去の記憶があることをさくまは知っている。知っていて尚気味悪がらずに傍にいて支えてくれた。そんなコイツに俺はいつの間にか落ちていた。
俺がコイツに気持ちを伝えてから一年も付き合ってんのに未だに初なコイツが可愛くて、俺の腕の中で固まっているさくまの髪を弄びながら毛先にkissを落とす。そのまま首筋に顔を埋め、スン…と匂いを嗅ぐ。と、俺好みのイイ匂いがした。

「期待っ!?えええあ、いや、するわけないじゃん?!」

「ンな、必死に否定することねェだろ…」

さくまの初恋も彼氏が出来たのも俺が初めてってのは知ってる。
But…いつまでも恥ずかしくて距離とられるってのも、なあ?

「…あ、ごめん」

ほら、そうやってすぐ…

「…Shit」

さくまごと体を起こすと、向かい合う形で座ることになった。右手を伸ばし頬に触れると途端に緊張したのが伝わってくる。そのまま隻眼で見つめていると、金縛りにあったかのようにさくまの体がピシッと硬直した。

「そろそろ追いかけっこは止めようぜ?次また逃げたら…そうだな、アンタの大切なクマのぬいぐるみ、攫ってってやるよ」

「え!そんな、駄目だよっ」

「駄目ってんなら、アンタが俺から逃げなきゃいいだけだろ?You see?」

「む・・・」

コイツが小学生の頃から大切にしてるっていうクマのぬいぐるみ。俺が日頃の感謝を込めて1時間も悩んだ挙句選んだやつだ。それを高校生になった今も大切に持ってるって知ったときは嬉しすぎて理性が飛びかけたんだったな。

「わ、わかった。もう逃げない!」

「・・・HA、せいぜい頑張りな」

頭を一撫でした後、頭の後ろに手を持っていきグッと自分の方に引き寄せ一瞬だけ唇を合わせる。

「じゃあ帰るぜ。また明日」

わしゃわしゃと掻き回してから立ち上がると、呆然としているさくまを置いて部屋から出た。

「あの時と違って今は時間が嫌というほどあんだ。だから急ぐ必要もねぇしな」

ゆっくり時間をかけていけばいい。

俺らしさは全くねぇ気もするが、さくまとだったら俺はいつまでも待てる気がする。
お前が一生思い出さなくても、俺は一生覚えてるぜ?










――――――なァ、愛姫。













 
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