短編綴
□月の影
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兄弟シリーズ 政宗編
▽設定
伊達 蒼弥
政宗の兄。政宗より1つ年上。スキンシップが好き。
容姿が美しいのでずっと母親に愛され続け、刀を持つことを禁じられている。そのため外に出られず肌が白く、体力もない。
注)
若干の破廉恥要素を含みますので、苦手な方は退散願います。
月の影
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兄弟シリーズ 政宗編
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遠くから馬の蹄の音が近付いてくる。
どうやら、先の戦に出ていた政宗たちが帰ってきたのだろう。俺の想像していた時刻よりも早い帰還に、いつからか力が入っていた胸の緊張が一気にほどける。
さて、部屋に居ても意味がないから門まで迎えに行くとしようか。
草履を履いて着物が崩れないように気を付けなから早足で政宗たちの元へと向かう。
しばらく進むと門が見えてきたので上がった呼吸を整えると、ゆっくりと近付いていった。
「政宗」
馬から降りた政宗に軽く手を振りながら近付く。鎧には新たな傷が増えていて所々に血が付着しているが、全て返り血のようだ。
「蒼弥!態々ここまで来なくても俺がいつも部屋まで行ってるじゃねえか」
「そうだけどさー?政宗の無事な姿をいち早く見たい兄の気持ちぐらいわかるだろう?」
「んな俺が無様にやられてくることなんざねぇから安心しな」
「ふふっ、政宗は頼もしいな」
「…なっ」
相変わらずの態度な弟に衝動が抑えきれず、自然な動作で冑を外して部下に渡すと、包み込むように政宗を抱き締めた。
「…大きな怪我はしていないようでよかった。掠り傷は俺が手当てするから、汚れ落とし終わったら部屋に来てね」
「……あァ、」
恥ずかしそうにしながらも大人しく抱き締められている政宗を愛しく感じ、頭をよしよしと撫でる。と、「子供扱いすんじゃねぇ」と目で訴えられて思わず笑みが溢れた。それと同時に政宗が息を飲むのを感じる。
「まだ抱き締めていたいけれど、これ以上小十郎に迷惑かけるわけにはいかないからね。…小十郎もお疲れ様」
政宗を名残惜しくも解放した後、ずっと横に控えていた小十郎に近付き、同じく頭を撫でる。
「な、何をなさるのですかっ!」
「政宗を守ってくれてありがとうね。それに、小十郎も大きな怪我がなくてよかった」
「っああえっと、ま、政宗様、この後畑を耕したいので、今すぐ汚れを落としに行きましょう!」
「え?小十郎、政宗っ!?…あーもう、部屋で待ってるからねっ!」
俺に頭を撫でられてからワタワタし始めたと思ったら政宗の手を引いて逃げるようにこの場から立ち去って行った。
いつも格好いい小十郎の、ああいう面を見ることが出来るのは滅多にないので、もう少し見ていたかったなあ…と思う。
+ + + +
政宗たちが帰ってきたのが八つ時。それからもう半刻ほど経っているが、未だに政宗が現れない。
何もすることがないので敷きっぱなしの布団に潜り込んでいるが、一向に来る気配がない。
随分待ったが、そのままの体勢で待っていたので次第に意識が薄れ、抗う事もなく堕ちていった。