イベント夢
□悪戯成功
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「おはようございまぁ...す?」
執務室のドアを開け、先に来ているはずの鬼灯へ挨拶をしたのだが肝心の鬼灯が見当たらない。
「あれ?今日鬼灯様お休みだったかな?」
誰もいない部屋の中を見回すと、積まれた書類が小さな山を作る机の上にちょこんと何か見慣れないものが置かれていた。
「何これ?手紙と...服??」
近寄って見てみるとそこには鬼灯の綺麗な字で書かれた置き手紙と、丁寧に畳まれた服
手紙には
『急な仕事が入ったので、留守にします。置いてある服は今日の仕事着です、着ないという選択肢は無いので素直に着てください。 オプションも必ず着けること。』
と書かれていた
「なにそれ...オプション?普通の仕事着じゃ駄目なの?」
頭に疑問符をたくさん浮かべながら、畳まれた服を手に取り広げ凛は思わず目を真ん丸にした。
それもそのはず、凛が着るように指示された服は_____
ゴシック調のデザインに繊細なレースが施された黒いワンピース
そして服の間からぽろりと落ちたのは黒い"猫耳"と、鈴の付いたオレンジ色のリボンの様な"首輪"
良く見ると、ワンピースのお尻の辺りからはぴょこりと黒く長い尻尾が生えている
「え...?何これ...猫?」
思わずひきつり気味の笑いがこぼれる。
「いやいや、どうして仕事着がコスプレ!?」
ツッコミを入れても返事をしてくれる人は不在で、しかも記憶が正しければ今日は視察だった気がする...
あの本当にシャレになってませんが?どんな部下虐めですかぁぁ??!
頭を抱え1人で唸る凛はまだ気づいていないが、畳まれていた服の下には、顔のあるカボチャの小さな肩掛け鞄。
中には飴玉と、小さなメモが貼り付けられていた。
『これを持って行かないと、悪戯されますからね?』
『着ないという選択肢は無い』とまで書くくらいだから...
あの鬼上司に着なかったことがバレれば、後々どうなるか考えると顔から火が出る程恥ずかしくても着ない訳にはいかなかった。
「にしたって酷すぎる!!虐めかた新しすぎっ、着るように言った本人いないし!!」
鏡に映る自分の姿に恥ずかしさでうずくまりたくなった。
品のいいワンピースに、黒の猫耳に尻尾、オレンジ色の首輪には動くたびに小さく鳴る鈴
黒いタイツの足は、艶やかなエナメルのハイヒールに収まっている。
カボチャの小さな肩掛け鞄が、何だか嘲笑っているように見えて少し憎たらしい。
しかしこのカボチャ鞄を見てやっとピンときたのだ、これは西洋のハロウィンという行事のシンボル
jack-o 'lantern
そしてハロウィンと言えば仮装
最近はちらほら地獄でも楽しまれるようになっていたが、まだまだ馴染みは薄い
何故仕事着で仮装を強制されるのか謎だが、間違いなくこの服はハロウィンにちなんでなのだろう。
「鬼灯様め...この仕打ち、帰ってきたらTrick or Treatでごっそりお菓子を頂戴しますからね!!」
そう自分に言い聞かせると凛は覚悟を決めたようにドアを開け、仕事へと出掛けることにした。