短編

□体温
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『体温』





まだ朝日も昇らない明け方、今の時期はこの時間帯が一番冷え込む。


うっすらとまどろみの中にある意識で、手を伸ばし探すのは愛しい人の温もり____


鬼灯が同じ布団で眠る恋人の名を寝言の様に呼べば、穏やかな寝息だけが小さく返事をした。



「そんな隅っこに居ないで、こっちへ来なさい」



そう言って、鬼灯はぐいっと寝ている凛を腕の中へ引き寄せた。



「ふにゃ....」


「貴方が居ないと寒いでしょう」



ぎゅうっと抱き締めれば、柔らかな肌の感触と布団の中でほっこり温まった人肌の温度

昨夜の情事の後そのまま寝たので、乱れた着物からはみ出した素肌が直に触れてスベスベと心地よい。


こうやって抱き合っていれば、体も心もお互いの温度で温められて何とも安らぐものだ。
意識が無いにも関わらず、凛も甘える猫のようにすり寄った。



「んんっ〜」


「なんです...その幸せそうな顔」



満たされているはずなのに、更に満たしたくなる。もはや、これは男としての性(サガ)なのだろうか?

甘える凛にジリジリと疼く小さな火を付けられ、その火を敢えて消す気にもなれない

こんな風に肌と肌が直に触れあっていれば、彼だって男なのだから無理もない。



「貴方って人は...眠っていても私を誘惑するのですね」



誘われるままにスルスルと着物の隙間から手を這わせ、薄く開いた唇にキスを落とせばぴくりと体が少し動いた

その反応がまた鬼灯の心を疼かせる。



「どのくらい....悪戯したら起きますかね?」



悪戯されて目覚めたら、どんな表情をするだろう?

眠りを妨げられて不機嫌になるのだろうか?目を真ん丸にして驚くだろうか?それとも顔を真っ赤にして布団にくるまる?


妙なワクワク感と心をだんだん強く支配していく欲望は混在して、鬼灯は堪らず凛を組み敷いて見下ろした。


あどけない寝顔に不釣り合いな程、乱れた着物から除く艶かしい肌

吸い寄せられるように、その首筋にキスをして舌を這わせた。



「寝ながら感じたら、している夢でも見るのでしょうか?」



首筋にキスを落としながら、やわやわと柔らかな胸を揉みしだいてやれば唇から甘い声が小さく漏れ出た。



「ぁっ.....ん..ぁ.....」



そんな声を聞いてしまったら、当たり前の様に先を求めて止まらなくなる

帯紐をほどき邪魔な着物を取っ払うと、むせかえる程の色香に抗うことなど到底出来ない。



「凛が...可愛いのがいけない」



無防備な胸をゆっくり口に含み吸い上げると、愛らしく先の飾りが自己主張し始めたのでもう片方の飾りも指で愛撫してやる。

すると凛は吐息混じりの喘ぎ声を上げ、瞳は閉じたままだが確かに呟いた。



「鬼灯さまぁ....んあっ、ダメぇ...人がきちゃ....」


「....ほぉ?」



どうやら本当に鬼灯の思った通り、夢の中でしているらしい。
しかも人が来るような場所で...これは虐めない手はないと鬼灯の心は踊った。



「凛...人に見られたい願望があるんですか?」



意地の悪い声で低く囁くと違うと首を振ったが、もどかしそうな顔が堪らずねだる。



「そこばっか....いやぁ、はや..く鬼灯さまっ...ほしぃ___」



そのおねだりに思わず鬼灯はドキリとさせられる



_____まったく...これだから貴方を虐めるのは止められない



「駄目ですよ、まだこっちを可愛がってないでしょう?」



手を蜜の溢れるそこへと移しつうっと花芽に触れると、それだけで凛の体がビクリと震えて目がうっすらと開いた。



「ぁんっ...ぁッれぇ?ここ...んっ...部屋....?」


「残念、これからがいいとこなのに起きてしまったんですか?せっかく外でする夢だったのに」



凛はその言葉に訳が分からないと困惑していたが、自分が一糸纏わぬ姿なのと

鬼灯の手が先程から敏感な部分に触れているのを感じてやっと状況を理解したらしい。



「鬼灯様が...寝てるのにするからっ...あんな夢見たんじゃないでないですか....!!」



真っ赤な顔で抗議する姿が堪らない


だから、そんな風に私を虜にする凛が悪いんですよ ____



「では責任を持って最後まで」


「えっ、ちょっと...待ってっ!」


「大人しく抱かれろ」


「きゃ、やぁっ....」


「それとも、夢の通り外でしますか?」



こんなに楽しそうに、意地悪な笑みを浮かべた鬼灯に勝てる人なんて地獄中探してもいるだろうか?

答えは間違いなく否

スイッチの入った鬼灯を止める手だては凛だって知らない。



「大丈夫ですよ?見られたとしても、目撃者には広言しないよう、肉体的にも精神的にも社会的にも全力で圧力をかけます」


「本当にやりかねないから怖いです」


「分かってるじゃないですか」



そうキスをされると焦らされていた体はそれだけでまたすぐに期待して、これじゃあ鬼灯様の思うつぼ

そう分かっていたって止められない私は、心底鬼灯様を愛してしまってる様です。



「ん..はぁ...鬼灯様、温かい....」


「奇遇ですね...私もそう思ってました」



求めて触れ合う素肌が唇が

熱を交換し合う

鬼灯の首に腕を回せば、交わる視線さえも熱っぽい



「凛の熱は中毒性が高すぎていけません」


「鬼灯様に言われたくないっ...」 






きっと貴方は知らないでしょう?

私を心底温められるのは


貴方の体温だけですよ?

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