短編
□クローバーVS鬼灯
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「鬼灯様、私ここで待っててもいいですか?」
鬼灯と凛は薬を貰いに桃源郷まで来ていたのだが、目的地の極楽満月に着く前に何故か凛はそう言い出した。
「気分でも悪いんですか?」
「ぇ、あの、気分は悪くないんですけど...」
「あぁ、白澤さんに会いたくないからですか?」
「...そうです。」
「そうですか、それなら構いませんよ。私も出来れば、凛さんとあいつを会わせたくないですから。」
すぐに「白澤さんに会いたくないから」って理由が思い浮かぶ鬼灯様、どれだけ白澤様を嫌ってるのかひしひし伝わります..
苦笑いをしながら、「すぐ戻ります。」と言って極楽満月に向かう鬼灯様の背を見送った。
白澤様ごめんなさい、嘘です!
そんなに嫌ってないですからね!
鬼灯様もごめんなさい、嘘ついて....でも、これには訳があるんです。
そう心の中で謝った。
「さて、探すぞ!」
凛がしゃがんだ先には、シロツメクサが咲いていた。
だが、凛の目的は花の方ではなく葉っぱの方。
探しているのは四つ葉のクローバーだ。
「鬼灯様が帰ってくるまでに見つかるかなぁ...」
目を凝らして、大量の三つ葉の中から四つ葉を探し始めた。
絶対見つける!!
意気込んだものの、あるのは三つ葉ばかり、やはり四つ葉はすぐに見つかる程数が無いのだ。
「うぅ〜鬼灯様戻って来ちゃう〜」
時間は刻一刻と過ぎ、凛を焦らせる。
ついには四つん這いになって探しはじめる始末だ。
「ぬぐぅ...なーい!」
「なんて格好してるんですか。」
「ぎゃぁ!!」
頭の上から鬼灯様の声がして飛び上がった、足音しなかったじゃないですか!
「..凛さん。」
呼ばれて、顔を上げない訳にはいかなくて、渋々鬼灯様を見上げた。
「あのっ...これにはちゃんと訳があ..る...」
この体勢の訳だけでも聞いてもらおうと発した言葉は途中で途切れた。
だって目の前には私に目線を合わせる様にしゃがんで、四つ葉のクローバーを差し出した鬼灯様が居たから。
「探していたのはこれですね?」
鬼灯様の手の中で、四つ葉のクローバーは太陽の光を浴び緑色が綺麗に輝いていた。
「あっ...」
「差し上げます。四つん這いになって、唸るくらい欲しかったんでしょう?」
いつも通り涼しい顔でそう言った鬼灯様。
私がどれだけ探しても見つからないのに、意図も簡単に見つけてしまうなんて...ずるい。
宝物を先には見つけられたような、ちょっと悔しい気分になった。
だが、そんな気持ちとは裏腹に、凛の頬はほんのり赤く染まった。
どうしてそんなに格好良いんですか...!
いつだって私に幸せをくれる鬼灯様は、幸せのシンボルだって簡単に見つけ出して、差し出してしまう。抜け目なんて無い。
「私が鬼灯様にプレゼントしたかったのに...」
悔しさと、胸にじんわり残る熱の様な甘さが混ざって、何とも言えない感情がぽつりと口から出てしまった。
「私に?」
「そうです...私も鬼灯様を幸せに出来るって証明したくて」
もうこの際言ってしまえ。
恥ずかしいのを無視して呟いた。
「.....充分幸せですがまだ幸せを頂けると言うのなら、お言葉に甘えてみるのもいいですね。」
あ、鬼灯様少し笑った?
凛がそう思った瞬間、鬼灯は凛の頬にキスをした。
「頂きました。」
「なっ...!」
チュッと響いたリップ音に、わたわたと照れる凛を見て鬼灯は問いかけた。
「四つ葉のクローバーの花言葉を知っていますか?」
「...知りませんよ?」
「『私のものになって』です。」
笑ってる笑ってる..!
めっちゃ不敵な笑みで!
「おかわりしてもいいですか?」
「あのっ、ちょっと待って...」
四つ葉のクローバーだって勝てない
鬼灯様がくれる今の幸せには