短編
□目隠し鬼
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「これでいいですか?きつくない?」
凛は鬼灯に目隠しを巻く。
「大丈夫です。」
連日徹夜が続いた鬼灯は、突然目の痛みを訴えた。
光りが当たると痛いと言うので、目への負担を少しでも軽くしようと凛は目隠しを巻いたのだ。
「しかし、不便ですね。」
「今日はゆっくり寝てたらいいですよ。」
凛は鬼灯の手を引き、ベッドまで誘導して座らせた。
それにしても鬼灯様....
その姿、何だか変な気分になりそう....
頬を赤らめた凛は、不謹慎だと思いながらも見えないのをいいことに鬼灯を凝視した。
目隠しのせいで完全に視覚を絶たれた鬼灯はどこか危うい美しさを放ち
整った顔に目隠しを巻くという行為そのものが色っぽく感じる。
「じゃぁ、用があったら携帯鳴らしてくださいね。仕事に行ってきます。」
そう言って手を離そうとしたが、鬼灯は凛の手をぎゅっと握ったまま一向に離そうとしない。
「見えないので、電話できません。今日は仕事を休んで私の側にいてください。」
「....あのっ...でも私が仕事しないと今日の分の仕事すごい量になりますよ?」
『側にいてください。』なんて言われて嬉しくない筈がない。
ドキドキと胸が高鳴る。
「仕事ならまた明日私が片付けます。」
そう言うと鬼灯は凛の手を引き、強引に腕の中へ納めて呟いた。
「病人の特権は甘やかされることです。」
「...甘やかされたいですか?」
鬼灯様が誰かに甘える姿なんて、私以外誰も知らない。
密かな優越感と、返事の代わりにぎゅうっと強く私を抱き締める鬼灯様に愛しさが込み上げた。
「仕方ない、今日は仕事サボっちゃいますっ...」
凛はぎゅっと鬼灯を抱き締め返した。