蒼穹

□雨の日のとある出来事
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参ったな〜雨なんて聞いてないっての……

仕方ない

総士に迎えに来てもらおう……



雨の日のとある出来事




「…わかった。じゃあ行くよ、待っててくれ」


そう言って、総士は一騎の家の受話器を置く。

今日は久しぶりに一騎の家に総士が泊まりに来た。
もちろん一騎が誘ったのだ。
一騎はいつも通り学校へ行き、地下での仕事がある総士は、借りた鍵を使ってココに来たのがつい2〜3時間前。
そして、雨が降り出したのは30分ほど前。
予想していない突然の雨は思ったよりもひどく、雨足は強くなる一方。
やむ気配はまるでない。

総士はいつもの長めのパーカーを羽織ると、玄関に置いてある2本の傘を持った。
一騎に言われた通りに、水色と黒の傘。
総士は水色の傘をさすと、逆の手で黒の傘をもち、歩き慣れた学校への道を歩き始めた。


地下での仕事が多い総士は、一騎らとは違い、「暇さえあれば学校に行く」ということは少ない。
ほんの少しの時間さえあれば、身体を休ませる。
だからといって学校に行かないわけにもいかない。
特に今は事務処理が無駄に多く、それが落ち着くまでは当分学校には毎日通えないだろう。
そんな毎日。
だから、幼き頃に当たり前に通っていたこの道を歩くのは、とても懐かしさを覚えた。




学校に到着すると、総士は生徒玄関へと足を踏み入れた。
校舎の中は静まり返っており、人気(ひとけ)もない。
ガランとした空間に、総士は意外に思いながらも、2つの傘を手近な傘立てに立てた。
そのまま学校に上がると、総士は一騎からの電話のままに教室へと向かった。



自分の足音だけが無機質に響く冷たい廊下。
どことなく地下に似ているようで、でもまったく違う。
ここには「温もり」があるような気がする。
人と人とが明るく接する「ぬくもり」

すくなくとも、地下にはそんな「温もり」は…ない。


「あれ?皆城じゃねぇか?」


ろう下を歩いていると、聞きなれない声に名を呼ばれた。
声の方を見やるとそこには見慣れない男子生徒が教室にいた。




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