蒼穹

□remembrance
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どうか届いてこの叫び

星を見上げ祈るように

君の笑顔・涙もすべて

忘れないよ

僕だけの宝物



remembrance





ただ黙って空を見上げては、何一つ変わらないものだと、俺はいつものひとり山で軽くため息をついた。



あれから---あの北極の戦いからどれくらいの時間が流れたのだろうか。
いや、はっきりと理解している。はっきりとわかっている。

毎朝カレンダーを見るたびに。
さり気なく時計を見るたびに。
無常にも時は流れ続けていくものだと、毎度ながら思う。


止まればいい。
その反面、早く進めばいいとも思う。
自分には、わからない。



(何を願っても、アイツはまだ帰ってこない)



もし時間が、止まれば彼はもっと早く帰ってくるかもしれない。
そしてあの時のままの姿で会いたいから、俺自身も成長したくないのかもしれない。

でも時間が進んでくれないと、彼自身も変わらないような気がして、それは自分を造りだす時間が進まないのと同意義。


北極から帰ってきて意外のほか簡単に回復してしまった瞳をそっと閉じ、たったひとりの人物を思い浮かべる。


俺にとっては唯一の存在。


不器用だけど真っ直ぐで、何事にも責任感が強い、彼という人格。

思ったことを容易く言葉にすることが出来ずとも、その姿勢は全てを護るという思いは強く。

俺の前だけは素直に笑い、そして涙も流す、特別視される存在。

何度も甘いキスを交わし、その身体を重ねあった。
勿論、ケンカもしたし互いの『葛藤』や『確執』だってあった。
互いが互いに距離を置いていたことだって、あった。


それでも、俺にとっては愛せる存在は彼だけで、もし、という現実逃避に似た思考さえ頭を過ぎらなかった。



そう、俺にとってはアイツが…---皆城総士が全てだったんだ。



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