蒼穹
□デートスタイル
1ページ/2ページ
時計はまだ朝の6時をまわったばかりである。
総士は重たい頭を起こすようにゆっくりと身を捩ると、隣にある別の体温に触れた。
(あぁ…そういえば)
昨日の夕方から、2人で過ごしていたんだっけ、と総士は昨晩を思い出した。
もうすでに恒例となりつつある---総士にすればそれは恐いことだが---1ヶ月に1度の完璧なる休息。
いつもは溜まっていく以外の道を知らない大量の仕事から、この日だけは解放される。
自ら望んだつもりはないが、上司でもある史彦から提案---命令を出されたことを考えると間違いなくその後ろには、幼馴染が絡んでいるのだろう。
それ以上の追求はしていないが。
のろのろと布団から這い出し、隣の一騎を一瞥した。
スヤスヤと規則的なため息が少々憎らしくもあるが、まぁ仕方ないか、と総士は苦笑いを浮かべた。
互いの距離を埋めるように、若い本能に任せて貪りあうように愛し合った。
胸に残るいくつかの紅い鬱血の印が昨日のことを恥ずかしさと共に思い出される。
(………)
急に恥ずかしさが込み上げてきて、総士は両手で顔を抑えた。
「何考えてるだ、僕は…」
「ぇ?昨日のことじゃないの?」
「そ、そんなことが…って、あれ?一騎?」
「おはよー」
「あ、あぁ。もしかして起こしたか?」
「いや、普通に起きただけ」
そうか、と安心したように総士は微笑んだ。
昨日から真壁家に泊まっているが、この家の家主でもある史彦の姿は無い。
暗黙の了解というか。
この日のことは干渉をせず、黙って家を子供2人に任せてしまう。
これ以上に有難いことはないが、逆を言えば、こういった関係を知っている、という結論に辿り着く。
最初は表を歩けない、と真剣に思うこともあったが、今では慣れてしまった方が勝ち、と言わんばかりの態度である。
この家には安らぎがあるし、家族の暖かさを直に感じられる。
何と心地良いか。
総士は横になったままの一騎の前髪を梳き、一騎はその総士の指を絡め取った。