蒼穹

□ラストの〆はベットの中で
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暑さは夏のまま。


明日から新学期。
一騎はカレンダーを見るたびにため息をつく。
そんな一騎を見るたびに、総士もため息をつく。


「一騎、諦めろ」

「でも…」

「カレンダー見ても宿題が勝手に終わるとは思えない」


総士の言葉はいつも大体的確である、嫌味な程に。

一騎の部屋。
全て終わらせたはずの宿題。
しかし、見落とし一つ。


「っていうか、何だよ数学2種類って」

「先生から注意されてただろう、2つあるって」

「こんなの役に立たないだろ!」

「そんな今更なことを…」


いいからいいから、と。
総士は一騎に次の問題を示してみせた。
露骨に顔を歪める一騎は、つまらなさそうに鼻と唇の間にペンを挟める。


「行儀悪い」

「だってさぁー…」


集中力が完全に途切れてしまったようだ。
否、最初から無かったかもしれない。


「なら僕は帰るぞ」

「何でだよ」

「一騎が手を動かさないから」


ぶすーっと一騎は総士を上目で見つめる。
今本当に帰ったら学校始まってもネチネチ言われそうな気がする。
それを視線で察した総士はただ呆れた。


「じゃあ一騎、一つ賭けをしよう」

「…賭け?」


と、総士は半分以上も残っている宿題をパラパラと捲った。


「この量なら1時間もかからない」

「それは総士だったらの話」

「一騎にだって不可能じゃない。もしこれが1時間以内で終わらせたら…一騎が欲しいものをやる」

「ま、マジで!!?」


思わずテーブルに手をつき立ち上がった一騎は、思わず総士に身を乗り出す。
その食い付きに、既に総士は後悔し始める。


「俺、やる!」

「…一つ、聞いていいか?」

「もしかしなくても、欲しいものはもう決まって…」

「勿論!待っててくれ総士。俺、お前の為に頑張るから!」


妙にハイテンションのまま、一騎はシャープのペンを高々に叫ぶ。


「今日は総士と、夏休み最後の思い出をベットの中で作るぞー」


次の瞬間。
総士の鉄拳が一騎の眉間に入ったのは、言うまでも無く。
そしてその音は、妙にキレイに響いた。

総士曰く。
一騎の頭は空だからこそ、きれいな音をたてたという。







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