蒼穹
□suger like non-suger
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どこか気まずそうな顔を浮かべてやってきた一騎の姿に、総士は眉をひそめた。
彼の手には大きめの紙袋。
一騎は何も言わずにデスクの上に、そのマチも広い袋を置いた。
suger like non-suger
「……ん?」
「……うん」
会話がよく繋がらない。
一騎は袋から白い箱を取り出し、その袋は総士がサッと横へとよける。
「…どー、したんだ、これ」
白い箱から出てきたのは、同じように白で包まれたデコレーションケーキ。
まさかのケーキ出現に総士は何も言わない。何も言えない。
「缶詰だけど、フルーツケーキ」
「いや、それは、わかる。が…」
数秒の沈黙。
互いは何も言わずに、目線はケーキに向けられたまま。
小さな溜め息が総士の口から漏れる。
「今日は、何かあったか?」
「何だと思う?」
「……先ほど考えてるが、わからない」
一騎は記念日を大切にするタイプだ。
何かしらの記念日は行事では、普段よりも腕をふるって、豪華な料理を作り出す。
これだけのケーキだ。
何かしらの記念日と考えるのが妥当だろう。
「安心しろ総士。今日は別に何かあるわけじゃないんだ」
「は?」
「…作りたい衝動に駆られた、っていうか」
恥ずかしそうに一騎は笑った。
つられて総士も苦笑いを浮かべる。
「じゃあ僕に持ってくるな。甘いもの苦手なの知ってるだろ?乙姫とか…」
「あぁ。だけど、気づけば総士用に作ってたみたいでさ」
「僕用…?」
「甘さ控えめ。女の子は甘いもの好きだからさ、このくらいの糖度じゃ美味しくない、って言われそうなんだよ」
先ほどよりも長い沈黙が広がる。
違うのは次は互いに視線が交じり合っていることだ。
そして、口を開いたのが早かったのは、一騎だった。
「いいだろ。別にさ、記念日がイコール、ケーキってわけじゃないし」
そう言って一騎は、人差し指ですくった生クリームを、総士の口へと運んだ。
完
両手に爆弾@楓
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ふぁふな:一*総
皆様に愛を込めて...20090222/200909再up