蒼穹

□心地よい沈黙
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【橙城庵樹様キリリク】


至福の時をすごすこと

大好きな人と過ごすこと

何時までもいつまでも、こうしていたいこと

自分だけの「我侭」じゃないよね?





心地よい沈黙





見上げる漆黒な空には、淡い光を放つ満月。

人気(ひとけ)もない深夜に近い時間帯。
海辺には2人の影。

話をすることなく、ただある沈黙。
それでも心地よい沈黙に、海辺に寝転がっていた一騎はうっすらと笑みを浮かべた。

いつからこんな風に物事を思うようになったんだろう。
昔はこんな風に会話がなくなることが怖かった気がする…。
沈黙が、痛かったような気がする。

今とは180度変わってしまったこと。
それも、隣にいるもう一人の存在のおかげなのかもしれない……。


「…一騎?」


そんな彼の名を呼んだのは、一騎とは違い、砂浜に上半身だけ起こしている総士の姿。


「どうかした?」

「いや…ただなんかさぁ、これが『幸せ』なんだなぁーって思ったんだよ」

「どしたの急に?」

「どうしたのって総士…もしかして信じてない?」

「まさか。僕もそう思ってるさ……これが『幸せ』なんだってね」


総士は一騎の方を見て、同意を表現するかのように笑った。

会話はいったんそれで終わった。

また沈黙になるが、2人を包み込む雰囲気はやはり心を締め付けるものではない。

(俺らが大人になったのか?それとも…)

2人の距離が縮まったから?

その経緯を思い出し、一騎は人知れず顔が赤くなるのを自覚する。
総士に見られてないか?と思い。一騎はチラリと総士を垣間見る。


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