蒼穹

□reality dream
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【羽意様キリリク】


「やっぱり一騎の料理は美味しいな」

そう言って、総士は目の前の一騎に微笑んだ。

「羨ましいよ、こんな特技があってさ」

「男で特技が料理だなんて、ちょっとアレだけどな」





reality dream





全てがゆっくりと流れていた。
何もしなくても、何かを奥深く考えなくても、時は静かに流れているだけだった。


一騎と総士は2人きりの時間を過ごしていた。
もうどれくらいこんな時を過ごしているのかわからない。
飽きる事はない。
いつもいつも他愛無い話をして、二人きりの時間を楽しんでいる。
たいした内容も話していないのに、互いに笑えるのは愛あってのことだろうか。
そう、思いたい。



夕食前に入浴をすませ、そのまま夕食。
食べ終わるころには2人ともすっかり髪の先まで乾ききっていて、満足していった。


その晩
布団を2つ並べ、総士はその上にちょこんと座り目を擦っていた。


「総士、眠たい?」


そんな総士の様子に気付いたのか、一騎も総士の横に腰を下ろす。


「いや、大丈夫…」


軽く頭を振る総士に、一騎は苦笑いを浮かべながらも満足していた。
すると一騎は総士の後ろに回り、自分の足に総士を挟め総士の身体を抱きしめた。


「ちょっ…一騎ぃ」


抵抗する元気もない総士を気にすることもなく、一騎は総士の髪に唇を落とす。
そのまま顔を埋めるようにして、呟く。


「総士の髪ってサラサラしてて気
持ちいいよね。俺、好きだよ」

「一騎、くすぐったい」

「はいはい」


軽きあしらわれてしまった総士は、仕方ないなと聞こえないように呟くと、一騎に寄りかかった。



どれくらい時間がたったのか。
一騎は飽きることなく総士の髪で遊び、総士は総士で、迫り来る眠気と闘っていた。


「ねぇ一騎…僕もう辛いんだけど…?」

「あ、ごめん。じゃ、寝よっか?」


と言ったものの、一騎は総士を離そうとしない。


「一騎?……って、えぇ!?」


何かを問う前に総士はそのままの体勢で横に転がった。
自分の身に何が起こったのかわからず、総士は目をパチクリさせる。


「さぁ寝るぞ」


よく事情がわかっていない総士を尻目に、一騎は楽しそうに器用に準備を進める。


「……ちょっと一騎」


そして自分の状況を完璧に飲み込んだのは、しばらくしてからだった。


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