蒼穹

□男という生き物は
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【reika様キリリク】



「あれ?総士…いない?」

チラリ、と一騎は自分の持っていた時計に目をやった。

約束した時間から約5分ほどプラスされた時刻。

彼が約束の時間にいないなんて、とてつもなく珍しい。

「俺、約束の時間、間違えたかな?」





男という生き物は





あれから。

一騎は何分か待ち合わせの場所に、ひとり突っ立っていた。
それでも総士の来る気配はなくて。
もしかして、怒って帰ってしまったのだろうかとも思ったが、一騎は最高総士を30分以上待たせてしまった経験がある。
なさけない話だが、その時総士は相変わらずだな、と笑うだけで、怒りを露にはしなかった。
その総士が怒って帰ってしまったということは、確率的に少ない気がする。
一騎は痺れを切らすように口元を歪ませながら、総士の家へと向かった。


そして今一騎の目の前に広がるのは。

ベットに横になる総士の図。



「総士?」


そっと声をかけてはみるが、何の反応も返さずスヤスヤと規則正しい寝息をたてている。
布団をかけず、ベットの上に倒れこむように寝転んでいる総士。


一騎は起こそうと伸ばした自分の手を、総士に触れる直前に止め、戻した。
総士に合わせるようにベットの横に姿勢を動かす。
そして、そっと総士の表情を伺ってみた。


「よく寝てるな…」


一騎は顔にかかっていた総士の髪を退かしてやると、総士の穏やかな顔が露になり、一騎は目を細めた。


(にしても、この格好は…)

と、一騎は思い出したように総士の姿を見下ろした。
今の総士は一騎にしてみれば目に毒、とも言えるような、大き目のシャツを一枚着ているだけだったのだ。
寝ているおかげで少し高めに感じる体温とは裏腹に、相変わらず足は細くて、白い。
まるで同じ男ではないかのように。
先ほど髪に触れた時に気付いたのだが、総士の髪は少し湿っていた。
大方、出かける前にシャワーを浴びて、そのまま気持ちよくなって、そのまま寝てしまったのだろう。


投げ出された白い足。湿って色が少し違う細い髪。無造作に広げられた首元からは鎖骨。


(これを目の前にして、俺はどうすればいい?)

一騎はひとり、内心焦っていた。
今日は別にこれといった用事はない。
ただ2人共偶々暇だったから遊ぼうと思った訳で。
だからこのまま総士が寝ていてもさほど問題はないが。

(いや、そーゆー問題じゃないってーの!)

一騎はため息を漏らした。


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