蒼穹
□家族という名の「絆」
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【汀夏樹様キリリク】
「じゃあ、お言葉に甘えて」
とても久しぶりに総士が笑ったような気がする。
それに、俺もとても嬉しくなる。
「あぁ。家で待ってる」
家族という名の「絆」
「見て見て総士!一騎こーんなに料理上手なのね〜」
乙姫が目の前に広がる、ありふれた食事に微笑む。
その様子を眺めているのは一騎と総士。
今夜、総士は一騎の家に泊まりにきた。
たまに総士は一騎の家に泊まりにきていたが、今回は乙姫も一緒に泊まりにきたのだ。
こういったことが初めてな乙姫にしてみれば、何よりも嬉しいことなのだろう。
一騎にしてみれば、あそこまではしゃいでいる乙姫を見るのは、実際初めてだった。
今3人共真壁家にいるが、その前までは海辺ではしゃいでいた。
もう少し遊びたい!と駄々をこね始める前に、ここ真壁家にやってきたのはつい30分前ほど。
そんな短い間にここまで料理が並ばれるとは思わなかった。
乙姫のように口には出さないが、総士も内心、相変わらずの一騎の手際の良さに舌を巻いていた。
ちなみに今夜、この家の主・史彦は帰ってこない予定である。
今回のようなことがある場合は何故か父親の史彦は家に帰ってこない。
というより、意図的に帰ってこないのだ。
「ゆっくりすればいい」
「俺がいると邪魔だろう?」
その発言は即ち、自分と総士の関係を地味に知っているからなんだろう、と一騎はそれ以上の追求はしなかった。
「ねぇ一騎、早く食べようよ〜」
「乙姫、行儀が悪い」
「ゴメン。でも早く食べたくて仕方ないの〜」
「わかったわかった。じゃあ食べよ。冷めない内に食べてくれたら嬉しいし」
「じゃあお言葉に甘えまして…いただきま〜す!」
「いただきます」
乙姫の言葉を皮切りに、3人は少し早めの夕食についた。