蒼穹

□君といるなら、どこまでも行けると思うんだ。
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【ミクラソライ様キリリク】



この世界はキラキラしてて

眩しさもとてもあって

ただ輝いているだけで綺麗だった。

真っ白な朝方の光は静寂を与えてくれる分だけ

この世界にいる自分と相手に変な錯覚を感じさせた。

そう、まるで---。





君といるなら、どこまでも行けると思うんだ。






「せっかくだから、乗らないか?」


まだきちんと朝も明けぬ、朝方。
一騎が総士に、そう言った。


たまの休みの日に片付け始めた物置で見つけた古い自転車。
せっかくだからとキレイにしてみると、くすんだ青の自転車が姿をあわらした。
ちょうどその時に総士が差し掛かったのだ。
あまりにも物珍しそうに眺めるものだから、一騎はうっすらと笑みを浮かべた。


地下の仕事明けで疲れてるはずなのに、総士も一騎に向かって笑った。
総士が頷くのを確認してから、一騎は自転車に腕を伸ばした。




一騎はただ必死に重たいペダルを踏んでいた。
その後ろには総士。
二人分の体重がかかっているのだから、重たいのは当然といえば当然だ。
それでも前に進めるということは、自転車の性能の良さというもの。
それを改めて実感できる、そんな今の状況。


「一騎、疲れたなら代わるぞ」

「いや、大丈夫…」

「でも」

「本当に、大丈夫だから…なっ!」



総士だって俺以上に疲れているんだ。
と、己に言い聞かせながら、一騎は総士に有無を言わせないように語尾を強めた。



海沿いを走ると、潮の匂いが鼻を刺激する。
当たり前の海の匂い。
幼い頃から何も変わらない、昔のままの海の、匂い。


「一騎、海、見れるか?」


おずおずと総士が話しかける。
すると一騎はうん、と頷き、海へと視線を向けた。
そこに広がっていたのは、確かにいつも見慣れているはずの海だった。
けれど、いつもとまるで違ったもののように映るのは、不思議な感覚だった。


まばらな蒼い空。

反射する海。

研ぎ澄まされた空間。


それはとてもキレイで、言葉を失いそうになるほどのものだった。



「なんだか…」


と、総士がいきなり口を開いたので、一騎の無意識の思考は一瞬で消える。


「何だ?」

「なんだか、今この世界にいるのが、僕と、一騎だけみたいだ」

「…うん」



眩しすぎる太陽がとてもキレイすぎて
閑散とした空気が心地よくて


なのに周囲には誰の姿も見えない時の止まった静か過ぎる空間。
静か過ぎて妙に落ち着かない。
それでも、一騎はもう一つの存在の身近さに、胸を撫で下ろした。




「まぁ、それも一つの錯覚だけどな」


総士がうっすらと優しく微笑み、一騎の肩に置いていた手に少し、力を込めた。


「総士?」

「なんでもない」

「本当か?また無理してるんじゃないだろうな」

「多分、してない」

「多分って…お前なぁ」


一騎が器用に自転車をこぎながら項垂れる。
そんな一騎に、総士は微かに白さを含むため息を、わざと大きく零した。


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