蒼穹
□disease&the later plan
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【空音様キリリク】
グツグツと火にかけた鍋から微かに良い匂いが漂う。
「総士ー、もう少しだからなー」
台所からベットに届かないことは承知の上だが、それでも一騎は声をかけた。
そして遠くからピピッ、と体温計の電子音が小さく耳に入った。
disease , and the later plan
ここは真壁家。
にも関わらず、一騎の部屋の布団に寝転んでいるのは、皆城総士。
なぜこんな所に総士が?
理由は簡単。
今までの疲労が積もりに積もり、倒れてしまったのだ。
そしてそのままだした、高い熱。
休養させるにはアルヴィスにこもっていても仕方ない、と判断したアルヴィス司令・真壁史彦は、息子に総士の世話を命じた。
本来ならこの島の医者の千鶴に預けるべきなのだが、何分彼女は忙しい。
しかも総士は目を離したら仕事をしようとする傾向が強い。
それを阻止する為に選出---大袈裟な言い方だが---されたのは一騎。
幼馴染であると同時に、その関係を遠の昔に越えてしまってる間柄に気付いているからこそ、史彦は息子に頼んだのだ。
否、命令などしなくとも、一騎は自分から総士の面倒を申し出るだろうが。
そして、今に至るのだ。
一騎は出来上がったばかりのお粥を総士の元へと運んだ。
「どうだ?熱、下がったか?」
総士は頬を熱で染めながら、何も言わず体温計を一騎に押し付けた。
表示されているのは37.9。
「また少しあがったみたい、だな」
一騎は軽く溜め息を吐いた。
総士は元々平熱が低く、しかも冷え性気味だ。
ギリギリで38度に達してなくとも、総士にしてみれば相当苦しいはずだ。
それに今は良いとしても、夜になったらもっと熱は上がっていく。
早く良くなってくれればと一騎は思い、そっと総士に触れた。
「お粥、作ったから」
「食べたくない」
「ったく、駄々をこねるな。子供じゃないんだからな。ほら…!」
一騎は総士の横たわっていた身体を持ち上げ、上半身を起こさせた。
「食べないと、薬呑めない」
「でも食欲が…」
「はいはい」
この幼馴染兼恋人は、普段からある意味我侭だ。
全て仕事を中心に置いて、そのせいで満足な睡眠も取らないし、食べ物も口にしない。
曰く「栄養は摂っているから平気」らしい。