蒼穹

□僕等の恋愛的日常
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【一騎のお嫁さんは総士だけだ!!様キリリク】


僕等には僕等の世界がある。
僕等には僕等の時間がある。

周囲が何を言おうとも。

僕等の邪魔はさせないからね。






僕等の恋愛的日常
〜被害を受けるのは誰!?〜





「おはよー」

当たり前に交わされる朝の挨拶。
校舎に向かう同年代の少年少女たちは、意気揚々と友と顔をあわせる。


その中を、カノンは欠伸をかみ殺しながら歩いていた。
まだこの学校に通うことになって日は浅い。
未だに緊張感が抜け切らないのは、今までとはまるで違う、ある種の異世界だからかもしれない。

ふと、見慣れた後頭部が視界に入る。
どこか周囲と違う雰囲気---オーラはどこにいてもわかる。
真壁一騎と皆城総士である。
2人が幼馴染の親友で、恋人という関係であることは結構最初に耳にしていた。

カノンは少し速度を早め、近づいた。
ある程度親しい2人といれば、きっと緊張も解けるだろうと思ったのだ。


「一騎、総士、おはよ……っ!?」

「あ、おはようカノン」

「おはよう」


明るいトーンと、落ち着いたトーン。
2人は微笑し、挨拶を返してくれた、のは良いのだが…。
カノンはその、まったくの予想外の光景に目を奪われた。


「あ、あの…野暮なことを訊くのかも知れないが…」

「なんだ?」

「…どうして、手、繋いでいるんだ?」


一騎と総士はキョトンとした顔でカノンを見返した。
一度、繋いである互いの手を目線まで上げると、それに一瞬視線を送る。


「変、か?」


一騎が眉を顰める。


「いや、そういう訳では…でも、人目とかあるだろ?恥ずかしいとか、ないのか?」

「…小さい頃からの習慣、っていうのかな」


真顔で答えられると、どうしようもない。


「そ、そうか……すまない」


それ以上の言葉は見つからず、カノンはその場に立ち尽くした。
頬を伝うのは汗か涙か。
2人に促され、己の足をどうにか動かしたカノンは、何も見なかったことにしよう、と心に鍵をかける。

慣れるまでは辛抱だよ。

その言葉を思い出し、同時に深く納得する。
時間の問題、時間の問題。
カノンは曖昧に2人の会話に相槌を打ちながら、教室へと向かったのだった。


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