□顔
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僕は基本的には、大げさだったかもしれない。

最初は色んなことにただ混乱していた。
けど、そういったものは、いつの間にか慣れてしまうものなんだな、と実感。


たとえば

この学園長の思いつきでとんでもないことやらされたり

たとえば

とんでもない事件に関わってしまったり

たとえば

同じ顔した友人が、側にいたりとか……







「らーいーぞー」

 
いつも通り廊下を歩いていると、後ろから自分の名を呼ぶ人間がいる。
声が誰なのかは明らかで、僕はため息を吐いた。


「…何、そんな甘い声だしてさ?」


ドスッと僕に纏わりつく、僕と同じ顔。

鉢屋三郎。
変装の名人で、この学園の武術大会でも優勝した経験をもつ、優秀な忍たまなはずだけど…
たまに僕の目から見て『馬鹿』にしか見えないことも度々で。
それは今も思ってることだったりもする。


「んー特に何もないけど……」

「?」

「いつも雷蔵は可愛いなぁ〜なんて思って」


いつもソレばっかりだよ?


「……ねぇ三郎…自分と同じ顔だってこと、知ってるよね?」

「そーだよ」

「僕の顔を可愛いっていうなら、今の自分の顔も可愛いってことだよ?」


そうだろ?
同じ顔してるんだよ?
僕自身が驚くくらいにね。


「だから、自分の顔を鏡とかで見て、幸せになっててよ。僕はこんな所で、そんな甘い声で自分の名を呼ばれることが恥ずかしんだからさ」

「んーそれは違うよ、雷蔵」

「何が?」


三郎は僕の前に立つと微笑んだ。


「確かに俺は雷蔵と同じ顔してるけど、全然雷蔵の方が可愛いんだよ。誰より何より可愛いんだよ!」


……小恥ずかしい奴…



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