□会えない理由
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「別に…行かなくても平気、かも」


わたしがポツリと呟いた言葉に、アキラは目を丸くした。
そんな顔しなくてもいいじゃない。



会えない理由




「マジか?」

「こんなことでわざわざ嘘言えるほど、器用じゃないわよ」

「いや口は誰よりも器用と思うけど…。で、もさぁなっちゃん…」


そんなに崩れなくてもいいじゃない。
アンタそれでも一流のモデルでしょ?そうでしょ?
そんな顔してたら、仕事、減るわよ。


「だって、いい機会だろ。俺の仕事にスタッフとして同行すれば、お金かからずでパリ行けるんだぜ?」

「それくらい理解してる」

「だったら…!ずっと会えなくて寂しいだろ?キリちゃんと」

「でも…いいの。まだ会えなくても、平気」


そう、まだ平気。
たまに、キリから手紙が届く。
中はびっしり文字で埋まっていて。
大変で辛い事も沢山あるけど幸せだって…いつも滲み出てくる。

電話もくる。
当たり前だけど手紙よりは多いけど、お金がかかるから長く話せない。
でもその短い電話からも、彼女なりの頑張りが伝わってくる。
もちろんメールだって。

羨ましい、とかじゃなくて。
妬みとかじゃなくて。

会えないのは、ただ…。


「わたし、今でもキリの親友だと思ってる」

「うん?」

「今のキリはとても幸せそう。願いが叶って、本当にわたしも嬉しいし…でも」

「…でも?」

「でも、もっとキリは頑張らなきゃいけないのよ」

アキラが眉を顰める。
わたしの口からはまた言葉が流れ出る。


「まだキリと十夜がパリに行って二ヶ月。これからが大変。
でも、まだキリは自分の足で頑張って歩いてるでしょ…わたしは、それを邪魔したくない。ただ、それだけ」



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