他
□ひとりじゃないから
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「レイ!」
まだ肌寒い朝日の昇る時間帯、シンは甲板に立つ同僚へと声をかけた。
優しくも、少し焦ったような感のある声に、レイはゆっくりと視線を移動させる。
微かに冷たさを含む風に、レイの綺麗な金髪をなびかせる。
「おはよう、シン」
「ったく、『おはよう』じゃないだろ!?こんな朝っぱらから空のベット見せられた俺は…」
「それは、すまなかったな」
悪びれた様子のない相変わらずのレイに、シンは高ぶった感情を溜め息に流した。
そのまま横に並び、レイと同じ方向を見る。
「朝焼けかぁー。なんか気持ちいいなぁ」
シンは腕を空へと伸ばし、全身も伸ばす。
鼻から息を漏らしながら力を抜いてダランと下げると、隣でクスリ、と聞こえた。
「なんだよ」
「いや、別に」
レイは口元を隠し、笑みを浮かべたまま、どこか楽しそうにシンを見た。
シンが怪訝そうな顔で見てくるのを無視して、レイは朝日でキラキラしている海へと目線を動かした。
ほんの少しの間をあけてから、シンは唐突に口を開いた。
「何でレイはこんな時間に起きたんだ?」
戻るのは最初の質問。
キョトンとした表情でレイが見返してくるものだから、思わずシンは眉を顰めた。
「なんでそんな顔すんの?」
「対するシンも、なんでそんな質問するんだ?」
「なんでって…お前最初の俺の言葉、聞いてた?」
あぁ、とレイは思い出すように頷いた。