□secret kiss
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警戒音は耳を突き刺す勢いで軍の内部を駆け抜けていた。
制服に身を包んだ軍人と、既にパイロットスーツに身を包んだ軍人とが、グラハムの前を通り過ぎていく。
通路から死角になるわずかな空間の壁に身体を預け、持っている紙コップの中身を流し込んだ。


secret kiss


「こんなところにいたのかい?」


制服でもパイロットスーツでもない、白衣姿のビリーは、目敏く隠れていたグラハムを見つけると、笑って見せた。


「君ならいの一番に出撃すると思ったのに」

「あぁ、そうだな」

「部下達が君のパーソナル・フラッグを見て混乱してるかもしれないね」


いつものように会話を繰り広げてはいるが、少し目を向けると、慌しく人が行き来している。
まるでこの空間だけが切り離されたよう。


「さぁ、そろそろ行くか」


グシャリ、と握り潰した紙コップを、グラハムはビリーへと押し当てた。
捨てておいてくれ、ということだろう。
通路から死角のこの空間にはダストボックスは置いていない。
ビリーは白衣のポケットに押し込むと、そんな相手の名前を呼んだ。


「ちゃんと帰ってくるんだよ」


額。頬。鼻先。首筋。
順にキスを落として、グラハムの髪を撫でた。


「戻ってきたら、唇にキスしてあげるから」

「あげる、か。カタギリ、君の方がしたいんじゃないか?」

「そうだね。否定はしない。だから、いってらっしゃい」

「正直で結構。いってくる」


台詞のあとに生まれた小さな油断。
グラハムは一瞬で距離を縮めると、そのビリーの唇に己の唇を重ねる。

1秒のキスを交わし、グラハムは軍人の雑踏の中へと姿を消した。
鮮やかな金髪が完璧に消えるまで見つめていたビリーは、嘆息して踵を返した。









両手に爆弾@楓
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G-00:ビリ*グラ

皆様に愛を込めて...20090222/200909再up






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