□僕らは長い別離を一瞬でなくする術をもつ
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久々に届いたであろう、ある人物からのメール。
柊一は仕事帰り、届いたメールを確認し、たった二言だけ。

『わかった。仕事終わりの夜中に行く』

と、だけ返した。

ちなみに、そのメールが届いたのは、昼前。
柊一が丁度、今回の仕事先に到着した頃だった。
だからどうすることでもなかったが、幾分かテンションは上がりそうであった。
遠い遠い今の自分の立つところ。
今相手は何を考えているのだろうか、と女々しく考え。

柊一は足を一歩、踏み出した。



僕らは長い別離を一瞬でなくする術をもつ


本当に深夜になってしまった。
ギリギリ日付は越えていないとはいえ、あまり大差のない数分で終わる今日。


「遅かったな」

「真夜中、って、送ったはずだ」


相手の開口一番がそれだったので、自然と返しもそれ相応になってしまう。
招き入れられて、家に上がってから、ようやく。

「いらっしゃい」

軽く、笑って、軽く、言われた。



「こんな遅くまで、ご苦労さん」

「仕事が遅くなった、というより、帰りの汽車が中途半端な場所で停止したんだ」

「なんでまた」

「詳しいことは知らない。寝てたからな」

「ふーん。寝不足?」

「まぁ。お前こそ、寝不足じゃないのか?」

「僕は一度仮眠取ってるからね。眠たくないよ」

「で、試験は出来たのかよ」

「・・・なんとも、いえない」

「駄目なら駄目で僕には関係ないし、慰めなんかもしないぞ」

「えー、いいじゃん少しくらい」

「少しって・・・」



久しぶりのメール。
久しぶりの再開。

一応『お付き合い』しているとはいえ、今日は久しぶり。

今日まで、誠志郎は何日も続く前期試験だったのだ。
試験勉強期間含め、その当日まで。
メールも電話も交わさなかった。

実をいうと、誠志郎の大学の試験が始める前は、柊一の高校の試験だった。
気が逸れては勉強にも身が入らない。
いつの間にか交わした小さな制約をお互い守り、気づけば約1ヶ月弱。
仕事でのバッティングを除けば。
2人は片手でも余るメールのやり取りをしただけであった。


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