他
□BLACK or WHITE or...?
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「あ、蓮さんお帰りなさい」
仕事も終わり、アストラルへ戻ってきた猫屋敷を迎えたのは柏原だった。
少年はいつもと変わらぬ反応---猫屋敷はあからさまに歪めた。
そんな少年を知ってか知らずか。
柏原は猫屋敷の腕を掴むと、半ば無理矢理のような感じで、自分のデスクへと連れてきた。
「最近新しいケーキショップがオープンしましてね、ついつい買っちゃいました」
柏原は乱雑なデスクの上に置いてある薄桃の箱を開けると、猫屋敷に見せ付けるように角度を変えた。
「3つ余ってますけど、蓮さんはどれにします?」
「要りません」
BLACK or WHITE or...?
未だに腕を拘束されたままだが、会話は一方的に進んでいた。
前まではこの拘束から逃げようともがいたものだが、それももう遠い昔の話になってしまった。
逃げても追いかけられて、また戻されるのなら、いっそ逃げるという行動は諦めた方が良い。
そのほうが無駄な体力を使わないで済むと理解した---させられたのは、間違いなく彼と、そして、もうひとり。
「えー美味しそうですよ?」
箱の中にあるのは3つのケーキ。
全てスクエア型の、ショートケーキ、チョコレートケーキ、チーズケーキ。
可愛らしいデコレーションがされてるとはいえ、猫屋敷がそれを可愛いと思うことはなく。
「蓮さんは甘さ控えめ、チョコケーキとかどうです?」
「だから結構です!」
「俺的には猫屋敷くんにはショートケーキかなぁ?」
猫屋敷がイライラの頂点に達する直前に、間に入ってきた声に2人は動きを止めた。
いつもの軽い調子で現れた司の腕は、すでにさり気なく、猫屋敷の腰へと回されていた。
「社長、帰っていたんですね。おかえりなさい」
「ただいまー。柏原くんに、猫屋敷くん」
「っていうか、離して下さい。邪魔です。近づかないで下さい」
「そーんなこと言わないでよ猫屋敷く〜ん。寂しいなぁ、もう」
次こそ全力で彼らの拘束を強制的に外すと、2人ともデスクとも離れた。
足下にいた朱雀を肩に乗せそのまま自身のデスクへと席についた。
「社長はどうして蓮さんにショートケーキ?」
「白いから」
「はい?」
「猫屋敷くんは白いし、柏原くんは黒いでしょう。だから、かな?俺は余ったチーズを食べよう」
「白いとか黒いとか…それって容姿で決めたんですか?」
「俺はどっちも大好きだけどねー」
白い着物に銀の髪の猫屋敷は全体的に白く、柏原はその逆位置にいるといっても過言ではないだろう。
苦笑いの柏原に、司はナイスアドバイスと多少の自画自賛を並べていたが、猫屋敷にはどうでもいいことだ。
そういえば自分はまだ制服のままだったというのを今更ながらに思い出し、億劫に猫屋敷は椅子から立ち上がった。
「はい、蓮さん!」
いつの間にかショートケーキを皿に乗せた柏原が目の前にいた。
ぞんざいに横を通り過ぎようとしたが、また腕を掴まされて引き寄せられる。
そして重なる2人の唇に。
「美味しいでしょう?」
柏原の舌先に乗せられた生クリームを、猫屋敷の口内へと無理矢理運ばされたのだ。
満足したように微笑む柏原の視線が突き刺さり、後ろからは茶化すような司の口笛が響く。
「流石だね柏原くん!…でも残念残念。そういうのは俺が猫屋敷くんにやってみたかったのになぁ」
「何回も言ってますけど、蓮さんは僕のですからねー」
一先ず、と。
猫屋敷は柏原の顔面を指差し、肩へと上ってきた愛猫に一言だけ。
「行け」
猫らは主人の意に従って、柏原へと爪をたてたのだった。
完
両手に爆弾@楓
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まぎか:柏*猫+司
皆様に愛を込めて...20090222/200909再up