□なんで、笑うの
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「早く下ろしてよね」

「はいはい」


アキラの私用車の助手席に下ろされるナツ。
しかし座るといっても、足は外に出したままの方向で。


「なっちゃん運動神経良いって思ってたけど…」

「良いわよ!だから、こんなの初体験よ」


ブスリとしたナツに苦笑いするアキラ。

いつものように、人目のない場所で過ごしていた2人。
とある寂れた神社を見つけ、階段を上がり、何もしないで---ナツは神も仏もないような言葉を発していたが---戻ってきた。

が、帰りの階段でナツは足を踏み間違えたのだ。
転び落ちそうになるのを、身体が耐えてみせたが、結局救ったのは伸ばされたアキラの腕。
勝手に捻った体と、引かれた体と。


「それで痛めちゃうなんてね。まぁ、骨には異常ないと思うよ」


アキラはナツの足に触れるためにしゃがみ込む。
ごめんねーと言いながら、足首を診断してくれる。


「赤くなってるだけよ」

「そうかも。でも一応、テーピングしておこっか?」


仕事用に買っておいた新品を開くと、慣れた手付きでナツの足首に巻いていく。
こればっかりはどうしようもないと、珍しく黙っていたナツだったが、思わず噴出す。


「痛かった?」

「痛くて笑うなんて、あたしマゾじゃないわよ」

「どうかしたの。なっちゃん」

「ううん、なんでも。こう見えても、アキラってトップモデルなのになぁ、って思っただけ」

「なんだそれ」


身の危険を助けてくれた。
ここまで背負ってくれた。
今は、テーピングしてくれている。

もどかしくて、面白くて。
ナツは軽く口元を押さえてみせた。



なんで、笑うの
(だって、まるでアタシ…お姫様みたいなんだもの)
(普段はそんなこと微塵にも思わないのにね!)































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