題
□ただ、手を握りたいなって
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「…どー、したの十瑚ちゃん?」
「え、えと…なんでもないわよ」
「…………」
仕事のあとの帰り道に、無意識に伸びた腕。
それは九十九の手に触れたことで意識が戻り、咄嗟に引いてしまう
。
その不審な動作は、九十九に小首を傾がせてしまった。
十瑚が気付かれないように小さくため息をつく。
今更恥ずかしがるようなことではない。…と思いたい。
悶々と百面相をしている十瑚に、九十九は小さく口元に弧を描いた。
「十瑚ちゃん、手…」
「え?」
「繋ぎたいんでしょ?ほら」
差し出された手に、一瞬戸惑う。
それでもまた無意識に伸びた己の手に、今度は逆らわずに、触れた。
「ふふ。懐かしいわね、九十九」
「そうだね」
幼き頃を思い出すように。
甘えた掌を、ギュッと握った。
ただ、手を握りたいなって
(これは絆だから)