題
□ごめんね
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「正式に決まったみたいですね」
静かな生徒会長室に、静かな声が通る。
「おめでとうございます、と。言った方が良いんでしょうかね」
思わず僚は苦笑いしてしまう。
総士を見るとこちらを見ようとせず、書類の整理する手を止めない。
僚は総士の背を向けるかたちで窓際の椅子に座る。
空は今日も快晴。
偽物と知っていながらも、それに癒される。
知ったのは、そんなに昔のことじゃない。
対して総士がそのことを最初から知っている現実に。
「…ごめんな、総士」
動いていた音が、止まる。
「戻ってこれなかったら、ごめん。お前らに全部を押し付けていくみたいで」
「…………」
「ずっと戦ってきた総士とか、可愛い後輩たちを…島のみんなを、もっと守ってあげたかったのに」
口にされなくとも分かる、生存率の低さ。
自ら志願したことに後悔はない。
しかし、置いていく者が心配で堪らない。
「…先輩はそんなネガティブな人間でした?」
「はい?」
「帰ってこればいいじゃないですか。それで心配事はなくなります」
「……オマエらしいよ、まったく」
きれいな空を見つめたまま、僚は小さく呟いた。
ごめんね
(哀しく笑う・言葉を飲み込む)