□ありがとう
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医務室の扉が開くと、目の前に総士がいた。
ぶつかりそうになって、慌てる。


「今、遠見先生は席を外しているぞ」

「そーなのか!?絆創膏もらいにきただけだけなのに…、じゃあいいや」

「…絆創膏の場所なら知ってる」


出て行こうとした総士が再び足を踏み入れる。
大人しく一騎は探す総士の後姿を眺めていたが、ふと思う。


「遠見先生がいないのに、総士は何してたんだ?」

「あぁ…薬の補充で。…あったぞ一騎、はい」

「あ、ありがと…。でも薬っていつもの、か?」


否定も肯定もしないところを見るとそうらしい。
一騎は眉を顰めると、総士に窘められる。

無力さに歯噛みしそうで。
無力さに血を流しそうで。
その感情を、押し止める。


「総士、いつも、ありがとう」


一騎の言葉に、総士は目を丸くする。


「お礼なんて、珍しいな」

「うん。ごめん、って言うと総士、辛そうに見えること最近多くなった気がして」


ごめん、と言うたびに。
普通では見分けつかない程度に歪む表情。
ずっと、それが気がかりだった。


「だから。俺らのためにいつも、ありがとう」


総士の頬に触れて、一騎は微笑んだ。


「ありがとう一騎。嬉しいな、そう言われるのは」


触れた手に、己の手を重ねて。



ありがとう
(心の奥底から自然に流れたメッセージ)























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