題
□好きになってもいいよ
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「僕は嫌い。少なくとも今は」
挑戦的に、睨みつけた。
といっても柊一が克也を睨んでいるのだ。
見上げるように顔を上げているものだから、少々笑えてしまう。
が、珍しくも美形陰陽師はそれを笑わず。
逆に睨みつける意思がなくても見下ろしている為に睨んでいるように見えてしまう、身長マジック。
「いい度胸じゃねぇか、鈴男の分際で」
「度胸がないとやっていけないからなこの仕事は」
「うるさい口だな、可愛くない」
「可愛くなくてけっこうだよ」
売り言葉と買い言葉が交差している。
よく飽きもせず、と、第三者がいたら呆れられただろうが。
「わかった。お前が言いたいことは理解した。僕だって馬鹿じゃない、受け止める」
どうやって最初の問題に戻ったかはいささか謎である。
戻るまで30分以上の口喧嘩をしているのだから、一通り言い切って必然に戻ってきた可能性も高い。
「でも、嫌いだよ僕は。だれがお前みたいな凶暴放火魔と付き合えるかー、ってんだよ」
「お前に拒否権はない。言うことをきけ」
「そんな権限自体、お前にはない。僕は操り人形じゃない。はいそうですか、と他人の言いなりになれない」
正論である。
ああ言われれば自分もそう返す、と思わず口を閉ざす。
「言っただろう。嫌いだって…」
沈黙のあとに、柊一がようやく口を開く。
偉そう、という克也の心の声を知らず---当たり前のことだが---腕を組んだ柊一。
「だからチャンスをやるよ」
「…チャンス、だと?」
「そうだよ。僕を、お前を好きにさせてみろよ」
僕を好きなら落としてみせろ。
どこぞの宣戦布告だ。
克也は言葉にも出来ない衝撃に、端正な顔を歪めてみせた。
「…そうだな、分かった。あとで吠え面かくなよ」
それが好きな人への言葉なのかはさておいて。
ここから2人の奇妙な関係が始まった。
好きになってもいいよ
(おとせる自信があるなら)
※女王様な柊くんを書いてみたい衝動から派生。