□言葉はもういらない
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好きなことだから耐えられる。
だから、文字の羅列がどれだけでも受諾する。

もちろん今でもその気持ちは変わっていない。


「と、思っていたんだけど」

「なんだ技術顧問殿、不満か?」

「いいや。…ただ、僕にも限度というものがあったんだなと認識しただけさ」


目の前の数値から目を外すと、コーヒーを両手に持つグラハムと目があった。
自然に渡されたそれを貰うと、一言礼を述べた。

通常よりも広いデスクの上に積み上げられた紙。
所々に色ペンで書き込まれているが、どう考えてもまだ目を通していないものも多いと見える。
惨状を見て、グラハムは笑う。


「人の不幸を笑わないでくれないか」

「それはすまない。が、私も何かと忙しいのだよ、実は」


この部屋の滞在時間、1時間になりかけながらも口を開いた。


「…これだろ、君が欲しいのは」


プリントアウトしたばかりで、まだほのかに暖かい紙を取る。
そして引き出しから数枚の紙を束ねたものを取り出し、先ほどの紙を1番上に重ねて手渡す。
受け取ったグラハムは1枚目だけを細かくチェックすると、残りは軽く目を通す程度に。


「感謝するよ、カタギリ」

「もっと早くに催促してくれれば直ぐ渡したのに。完成はしていたんだ」

「あぁ、そうだな。完成していたことはわかっていたよ」


あとはタイミングさ。
グラハムがそう言って、未開封の目薬を置いて部屋から出て行く。
ちょうど空になってしまった愛用製品。


「出来る男だね、彼は」


終わりの見えない仕事から目を逸らしながら、ビリーは少し甘めのコーヒーで喉を潤した。



言葉はもういらない
(何年の付き合いだと思っているんだ。馬鹿にするなよ。)

























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