□今宵、二人は誓いとしての祈りを捧げる
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「仕事もう終わっただろう。なら付き合え」

そうニヒルに口端をつり上げ、笑う彼に。
ため息ひとつ、白衣を脱ぐ。








「あー寒い寒い」


ポケットに手を入れて、それでも吐く息は当然白く。


「冬だからな。当然」


クリスマスといったら教会じゃないか。
どんなデートの誘い方だ、と問えば、お前しかいなかったと鼻で笑われた。

彼がクリスチャンかどうかは知らないが、生粋のアメリカ人なら当然かも知れないと考える。
旧知の仲だというのに、そこを知らないのは問題なのか。
否、そうではないだろう。
何を信仰しようと、宗教が違えでも、その人がその人である事実は変わらない。
宗教というものは少なからず人格に影響を与えるものだとされる。
信仰宗教で相手を嫌いになるというイコール、最初から相手を信じていないということか。
というよりも。
宗教云々で、それだけで相手を嫌うなどくだらない。


「………ぃ、聞いているのか?」

「……すまない、何も聞いていない」

「…素直で良い。だが、何考えてたんだ?」

「んー…宗教について、かな?」


怪訝そうな顔を向けられて、少しだけ困ってしまう。
申し訳ない、と頭を下げるが、そこまでのことじゃないとため息。


「宗教論争でも考えていたか?」

「まさか。もっとくだらないことだよ」

「宗教がなくなれば紛争は終わるとか…考えてないのか?」

「馬鹿げているとは思うけどね。人にはそれぞれの信仰心があって、対立するためにあるわけではないのにね」

「全くだ。ただし、テロを神の行為とする集団は駆逐したいものだ」


なんという物騒な話をしているのだろうか。
洒落たバーで、これをつまみに酒を飲んでいたら周囲の人間は逃げ出すかもしれない。
それもまた一興と、僕たちは笑うのだろうが。


「そういえば、どこの教会に行くんだい?」

「さぁ、な。適当」

「適当って…君ね」

「大切なのは教会に行くよりも、祈りの心さ」


また、笑う。
嫌でも幼さの消えない---童顔の彼は今日も良く笑う。


「何の祈りだい?」

「色々さ」




今宵、二人は誓いとしての祈りを捧げる
(神に祈っても、きっと不動ではないから誓いをたてるだけ。結局は己の為さ。)































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