□ずっとずっと贈り物を待っていた
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「ありがとー!」


クリスマスカラーの大きな箱を手にした幼子が横を通り過ぎた。
流石はクリスマスだな、と、自分の昔を思い出した。





「…可愛げのないやつだな。さぞ両親は嘆いたろうに」


なんとなく話した、クリスマスプレゼントの思い出。
軽く言ったつもりがなんとも一刀両断。
否定はしない、自覚が十分過ぎるほどにあるから。

昔話に花を咲かせ、大人になった今を考え歩く。
すると再び、彼は突然その足を止めた。
横に並んでいた彼、よりも一歩前の場所で自分は立ち止まり。


「どうしたんだい?次は」


何も言わず、彼はコチラのコートの襟を掴み、ぐっと引き寄せた。
コンマで縮まる顔、距離。
男、大人が2人で何をしているのかと視線が少々痛い。


「………」

「………」


お互いに何も言わず、数秒。
ゆっくりと外された手を見つめ、乱れた襟を直す。


「…行くぞ」


無駄なこと一つも言わず、簡潔に、踵と共に言葉を返す彼。
小さく嘆息し、一歩踏み出し、横を通り過ぎる彼の腕を掴み、そして。


「言ってくれればいいのに」

「察しろといつも言っている」

「それじゃこっちが悪いのか。すまなかったね」

「分かっているなら、忘れるな」


彼の腕を掴み、そして…その唇にそっと己の唇を触れる。
掠めるような、キスとも言えぬようなキス一つ。
そのまま金髪にも唇を触れさせて、空いた手で襟足を撫で上げたのだ。


「もしかして、待っていてくれたのかい?」

「もしかして11時59分にくれるかもと考えたが、お前のことだ、忘れている気がしてな」

「流石だね」

「褒められても嬉しくないな」

「僕は幸せ者だ。愛されているみたいだね、僕は君に」

「当然だ。…というより、お互い様だろう」


恥ずかしげもなく語る彼は、何人にも尊敬されるかもしれない。
ある意味で。



ずっとずっと贈り物を待っていた
(タイミングの逃したら一生貰えないプレゼントは自分から誘って良いですか?)






























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