□雪の舞う白い日
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白い息も演出なのだと笑う貴方は。

無邪気に手を差し出すのだ。


彩ル日常
雪の舞う白い日



「流石にここいらの地域ともなると、寒い」


話しかけた言葉か呟いた言葉か。
果たしてどちらか。
自分で発した声は曖昧な距離に届きはするだろうが、きっと到達はしない。

返事をもらえれば勝ちとするなら。
聴こえなかったことは負けとなるのか。
何だか不釣合いだと自嘲する。


「確かに。寒い国に生まれたからって、必ず耐性がつくもんじゃねぇからな」


おー寒い寒い、と。
ポケットに手を入れ、マフラーに隠れる長い髪と口元。
似たような格好だが、まるで違う印象に逆に緊張してしまう。


「任務まで待機なのは分かるけど、こう寒かったら動きたくないもんだな」

「動けば温かくなるんじゃないんですか?」

「俺は固定ポジションでライフル構えるだけだからなー」

「そんなこと言うなら、僕は寒空を飛びまわっているから温かくならないですよ」

「そりゃそうだな」


ふと、彼が近づき自分のマフラーを正してくれる。
元々適当にしか巻いてない。
素直に白状すると、今度服とマフラーを縫い付けるぞと脅された。

なんて居心地の良い、今という一瞬だ。

気付けば、子供がはしゃいで僕らを横切り。
合わさった視点から理解したのは。白い雪。


「雪?」


手袋の手を出すと、雪は一瞬で溶けてしまう。


「全く、積もらないでほしいな」

「何でですか?」

「雪に血が映えるから」


残酷な言葉は間違いなく正論。
ギュっと握った手が冷たいのは、寒さのせいか、彼の言葉のせいか。


「なぁ…」

「あ、はい」

「もし雪積もったらさ」

「はい…」

「雪だるまでも作るか」

「…はい?」

「ほら、スノーマン」

「それは分かってますけど…いきなり」


いいじゃないか。
彼は口端をつり上げ笑い、こちらを横目でみやる。


「約束だからな。絶対だ」


彼の言う意味がなんとなくわかって、一つ頷いた。


「でも、作ったことないんです。教えてください」

「あぁ。手取り足取り教えてやるよ」


どこか厭らしい発音の台詞だった。




雪の舞う白い日
(ホワイトアウトの中、道標が血になるかもしれないけれど)

































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