□月が煌く銀色の日
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あんなにも恋焦がれた月は、こんなに近くにあったのか。


彩ル日常
月が煌く銀色の日



「確かに、そうですね」


宇宙ステーションのバーから外を見れば、広がるのは宇宙。
月は地球にいる時より大きい。
それは至極当然のことで。


「それが今や、ちょいと遠出すれば月に触れられる」

「遠出って…散歩の延長みたいな言い方ですね」

「あながち間違いじゃないだろ?」


薄暗いバーに差し込むのは、月の淡い光。
月と一番近いステーションは、なかなかの人気だ。
そんな中を、男2人がバーで過ごす。
少しだけ、申し訳なく思う。


「あー待機中ってことで、強いアルコール飲めないってのも、辛いな」

「辛抱して下さい。ハロがうるさいですよ」

「…何でハロ?」

「…特に深い意味はありません、けど」


オレンジのハロが「サケクサイ!」と転がりながら騒ぐ姿を思い浮かべて、笑ってしまった。
それを察したのか、彼は笑うなよ、と同じく笑っていた。

しばし経ち、通信機器が点滅する。
それを彼が手にすると、いくつか端末を操作し、再び戻す。
そしてコチラを見て、にやりと笑った。
月光が大人な表情を彩る。
今のタイミングは不謹慎で、それでも高鳴る心臓。


「いいニュースだ。任務は明日の夜に決定」

「ぇ」

「今日はフリーだ。しかも明日の夕方までは羽伸ばせるな」


手を上げ、彼はボーイを呼んだ。
早速飲む気満々だ、まるでスメラギさんに感化されたように。

数分して運ばれてきた、2つのグラス。
片方は彼に、片方は僕に。


「頼んでませんけど、僕」

「俺が奢ってやるよ」

「じゃなくて…」

「アルコール少ないカクテルだから、平気だろ」

「だから…」

「俺のスクリュードライバー、飲んでみる?」

「いらないです」

「即答かよ」


彼がグラスをこちらに見せ付けるように、持ち上げる。
ここで拒否をするのも申し訳ないと、同じように持ち上げた。


「はーい、乾杯」


チン、と静かに音が響く。
月光が色づく酒を、さらに神秘的に輝かせる。
それを少し、流し込む。


「甘いですね、飲みやすい」

「また時間できたら、一緒に飲もうぜ。色々と酒について教えてやるよ」


一気に半分飲み干したグラスを置いて、彼は笑った。


月が煌く銀色の日
(月光に照らされた貴方は、陰陽で作られ、美しい。)





20080318up


























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