□花の香る桃色の日
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舞うは花弁。

ほのかな、色、のピンクの。


彩ル日常
花の香る桃色の日



知ってるか?

唐突の彼の問いに意識を傾けたのは数時間前のこと。
あれよこれよと流されて、今は2人で公園のベンチにいる。


「日本には桜?を愛でる習慣があるらしいぜ」

「愛でる?」

「そう。花を見て、それをおつまみにして酒を飲んで食べてと楽しむ、ってらしいぞ」

「それはなかなか、変わった趣向の…文化、ですね」

「俺も驚いたよ。趣、とか言うらしい」


と、いうことで(なにが「ということ」なのかは分からないが)。
公園のベンチに男2人が、適当な場所で購入したアルコールを手にして座っている。
当初は目立つとも思ったが、この季節にこういう光景は目立たないらしい。

ピンクの花弁が、ヒラリ、と舞う。
缶の飲み口に1枚、ヒラ、と揺れ落ちればそこで目が止まる。


「…予想以上に、良いかもしれないですね」

「ん?こういうイベントのことか?」

「えぇ。花弁が舞えば舞うほど、現実ではない世界に堕ちていくようで」


なかなか下向きな感想だな、と笑われた。
曖昧に笑い返して、逆に問い掛けてみたのだ。
貴方は何を抱いたか、と。


「別に、何も。楽しく酒が飲めれば場所はどこでもいいし…。あ、お前が隣にいること前提で、だけど」


一気に呷ったアルコールの缶を握り潰すと、ゴミ袋に突っ込んだ。
自分のも追加して、立ち上がる。
テロ対策でゴミ箱は置いていない為持って帰らなくてはならないのが、少し、惨めだと彼はまた笑う。


「ちょい待ち。髪に花びら付いてるぞ」

「…貴方にもついてますよ」


お互いに取り合って、また空へと舞い戻す。


「でもピンクに堕ちる、って何かエロいな…」

「流石は、煩悩の塊ですね」

「褒め言葉、だよなソレ」



花の香る桃色の日
(ピンクに酔って堕ちていく、それも快楽)





20080508up

























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