□人工的な冷たさ
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タチコマ

公安9課に配属されている、ブルーのボディーに2つのアーム、4つの足をもつ小型思考戦車である。

ニューロチップの高度AI制御によって、操縦者搭乗型にも関わらず、単独の行動も可能にしている。

個体差を持たせないように、記憶や経験の並列化を行っていたが。
諸々の事件があり、配属された9機は「個性」を習得した。

最新鋭の兵器であり、彼らは9課のマスコット、であるらしい。



ふと気付く6のお題
人工的な 冷たさ




どんなに人間の脳を電脳として進化させたとしても。
この季節の暑さというものは何よりもやっかいだと、トグサは汗を拭った。


公安9課にあるタチコマのハンガー。
熱は上にあがるという自然現象から逃げたのがまず間違いだった。


「ここは何でも興味を持ちたがる機械が集まる場所だったよ」

『あー、トグサくん酷ーい!』

『僕らはただの機械じゃないよ』

「…でも、機械だろ?」

『僕らは普通はありえない「個性」を持っているんだ』

『普通の機械じゃ無理』

『AIあっても、これは出来ないよねー』

「…はいはい」


数機のタチコマがトグサの傍にいる。
青のボディーが妙に輝いて見えるのは何故か。
夏に見る青をいったら、海やらを思い出すからだろうか。
やはり、間違った。


「あー、暑い…」

『あれー?トグサくんお疲れ?』

「暑いんだよ」

『夏だもんねー』

『ここ数日は気温も微妙に上昇中』

『これから難民区域の死者も増えそうだよね』

『でも、過去の統計から考えると…』


目の前で繰り広げられる会話に、トグサはため息をついた。

熱というものは確かに上にいく。
だから下におりたというのに、現れたのはこの戦車たち。
機械の持つ熱が部屋に充満していたのだ。

すぐ踵を返そうと思っても。

機械に対しての表現として正確かどうかはわからないが---彼らは興味本能が妙に発達している。
本やネットワーク上で得られない、特に人間というものに興味を持ち。
この公安9課で唯一の妻帯者---トグサに対して、暇があれば質問攻め。

タチコマに捕まってしまったら、電脳以外手をつけていないトグサが敵うはずもなく。


(こんな時に冷房機器のメンテ入れなくてもいいのに)

と、トグサは上司の顔を頭の中に描いた。



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