□心を暴いて
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それがどんなに単純で難しいのか。

よくわかっている。

だから、だからこそ。




行き違う二人の10のお題
心 を 暴いて





いつもの地下、総士の部屋。
敵の襲来がなければ、仕事を進める。
やるときにやっておく。

その背に、声がかけられる。
声は今だけではない。
ずっと前から、ひとりごとのように零す声は。
嫌でも総士の耳に入っていた。


「だから、言わなくちゃ誰にも伝わらないよ」


総士の妹である乙姫は、仕事の手を止めない総士に言う。
しかし総士は返そうはしない。


「わかってもらえないよ」

「別にわかってもらおうとは思わないよ」


総士の声は静かなものだった。
乙姫は軽く肩を竦めた。


「そういうことじゃなくて…」


乙姫は仕方ないように、少しだけ声のボリュームを上げた。
それでも総士は別段気にする様子はなかった。


「わかってもらうことは相手の負担になるかもしれない。けど、必ずしもそうじゃない」


だってそうでしょ?と乙姫は続ける。


「どんなに辛いことでもわかりたいって、共有したいって…そう思うのは悪いことでも駄目なことでもないのよ」

「それは乙姫の…」

「でも、確率は50%だよ」

「…………」


何も言わなくなった総士に、乙姫はどこか嬉しそうに付け加える。


「大丈夫。一騎は強いから。強く、なったから…」



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