□曇り空なら明日はいい日
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怪しげな洋館の窓。

簡易な「照る照る坊主」ひとつ。

ニコニコ笑顔で、そこにいる。



行き違う二人の10のお題
曇り空 なら 明日は いい日




魔法使い派遣会社・アストラル。
魔よけの香炉の置かれた、その隣の室内側の窓枠。

赤と白で彩られる、簡略された小さな巫女服姿の少女。
少女は嬉しそうに、上にかけられた照る照る坊主を見つめていた。


「晴れるかなぁ、明日」

「ずっとこんな天気、続いてますね」


みかんの後ろで、猫をあやしながらの猫屋敷が続ける。
ここ最近は、雨こそ降らないが快晴がなく、見上げては雲ばかり。
時たま雲間から光は射すが、晴れとは言わない。


「そーなの。明日の遠足はやっぱり晴れてて欲しいし」

「占ってみたんですか?」

「してないよー。雨、って出たらヤだもん」

「私がやりましょうか?」


提案に、みかんは唸る。
知りたいけど知りたくない。
こういう時、自分にそういう技能があるのが面倒だ。
所詮は占い、と割り切ってしまえば楽だが、そんなことも出来ない。
自分は仮にも巫女なのだから。

その後ろ姿を見つめる猫屋敷の表情は柔らかい。
どこか苦笑いを含み、猫屋敷はみかんの頭を撫でる。


「きっと大丈夫ですよ。こんなに曇ってるんですから、明日は晴れます」

「…占ったの?」

「いいえ。こう曇りが続いているんですから、そろそろ晴れてもいいかなぁ、と」

「なにそれー」


年相応に無邪気に笑い声を上げるみかん。

その頭上で、みかんお手製のてるてる坊主が揺れている。
どこか下手に描かれた笑顔のままに。






(猫屋敷さーん、魔法でどうにかならないものなのかなぁ?)
(前日に言われましても…数日前から儀式準備しないといけませんし)
(だよねぇー)


20081114





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